米国経済は2025年、外国人旅行者の減少と米国製品の不買運動により、大きな打撃を受けることになりそうだ。景気後退(リセッション)のリスク要因がさらに増えることになる。
米国際貿易局(ITA)によると、航空機で入国した外国人の数は3月、前年同月比で約10%減少した。ゴールドマン・サックス・グループは最悪のシナリオとして、渡航者減少と不買運動による打撃は、米国内総生産(GDP)の0.3%分に相当する約900億ドル(約1兆2900億円)に上ると推計した。

新型コロナウィルスのパンデミック(世界的大流行)の移動制限が解除されて外国旅行が再び活況になり、このところ、外国人観光客は米国経済に追い風だった。だが、国境での厳しい対応や地政学的摩擦、世界経済の先行き不透明感の高まりにより、多くの訪米希望者が旅行の計画を見直している。
カナダ人の映像制作者、カーティス・アレンさん(34)もそんな1人だ。トランプ大統領がカナダに追加関税を課し、同国を米国の51番目の州にすべきだと発言したことなどを受け、アレンさんは米国での休暇をキャンセルした。パートナーと長年、米オレゴン州でのキャンプ旅行に何度も行ってきたが、今年は代わりにカナダのブリティッシュコロンビア州を旅行することにした。
アレンさんは「ただ家にいるわけではない。どこか別の場所で、同じだけのお金を使うつもりだ」と話した。
アレンさんの米国忌避はそれだけではない。米動画配信サービスのネットフリックスを解約し、食料品店では、米国からの輸入品を積極的に避けている。原産地を確認するため、買い物に以前の2倍の時間がかかるようになったという。
ITAによると、外国人旅行者による米国内での消費額は昨年、過去最高の2540億ドルに達した。2025年の見通しも明るいはずだった。ITAは3月上旬、25年は米国への渡航者が7700万人に上り、26年には過去最高を記録すると予測した。
だが、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の分析によると、外国人旅行者による米国内での消費支出約200億ドルが危ぶまれている。
急激な後退の兆候はすでに現れている。10日に発表された3月の米消費者物価指数(CPI)統計では、航空料金、ホテルやレンタカー料金が下落した。ゴールドマンのエコノミストとHSBCホールディングスは、需要の低下は外国人旅行者の減少によるものと指摘している。
インフレーション・インサイツのオメイア・シャリフ氏は、ホテル料金の下落は、カナダからの旅行者減少によって米北西部で11%下がったことが大きいとの見方を示した。同氏は「カナダ人旅行者がどれほど減少しているかを考えると、この地域にとっては多少問題かもしれない」と述べた。
予約激減
OAGアビエーション・ワールドワイドのリポートによると、9月までのカナダ人の米国行きフライトの予約は、前年同期比70%下落した。仏ホテルチェーンのアコーでは、欧州の旅行者による米国への夏の予約が25%減少している。同社のセバスチャン・バザン最高経営責任者(CEO)は、トランプ政権による国境管理の強化が「悪い評判」を呼び、旅行者が他の目的地に流れているためと指摘した。
ゴールドマンのエコノミスト、ジョセフ・ブリッグス氏らは3月31日のリポートで「米国の関税発表や、これまでの同盟国に対する厳しい態度が、世界の米国に対する評価を損なっている」との指摘した。 また、「関税による直接的な悪影響や、他国からの報復措置による打撃といった、すでに織り込まれている要因に加え、こうした逆風が、2025年の米GDP成長率が市場予想を下回る理由になる」としている。
見通しの悪化にもかかわらず、オレゴン州の観光局「トラベル・オレゴン」のトッド・ダビッドソンCEOは、外国人旅行者誘致の取り組みを続けていると述べた。カナダ・バンクーバーでのアドベンチャー旅行業界でオレゴン州を売り込んできたばかりという同氏のチームは、数週間後には英国やインド、ブラジルからの販売・マーケティングパートナーを迎える予定だ。
同時に、チームは状況の展開に応じ、同観光局の戦略を国内旅行者により重点を置いたものにシフトすべきかどうかも検討しているという。
ダビッドソン氏は「オレゴン州は、国際市場から目を離さず、今後も注視し続ける。外国からの来訪者が戻ってくる準備ができた時に備えておく」と述べた。
原題:US Economy to Lose Billions as Foreign Tourists Stay Away (1)(抜粋)

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