中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に南米で初めて参加したパナマが2月、この構想からの離脱を表明した。パナマ運河をめぐって米トランプ政権は圧力を強めており、政策転換に踏み切ったかたちだ。中国の「一帯一路」はいま、正念場を迎えている――。
写真=AFP/時事通信フォト
2024年12月19日にマカオで撮影された中国の習近平国家主席と、2024年11月13日にワシントンD.C.で撮影されたドナルド・トランプ大統領
国際海運の要衝「パナマ運河」をめぐる米中の火花
北米・南米大陸間の“くびれ”を貫く、パナマ運河。ネオパナマックス級と呼ばれる最大幅49メートルまでの大型船舶が貨物コンテナを満載し、日々悠然と通り抜けてゆく。
1914年に開通した全長約80キロのこの運河は、太平洋と大西洋を結ぶ国際海運の要衝だ。南米の先端付近まで迂回するマゼラン海峡ルートに比べ、所要日数を2~3週間減と大幅に短縮する。
2005年、パナマ運河・ミラフローレス閘門を通航するRORO船。同閘門を通航する船舶として、同船は最大規模(写真=Dozenist/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons)
巨大船舶の航行を見守りながら、関係者は運河の重要性を、フランスの国際ニュース局・フランス24に語る。「パナマ運河を経由する貨物の大半は、アメリカ発、かつアメリカ行きのものです。75%近くを占めますね」。アメリカの東西の海岸を結ぶ重要なルートとなっており、次いで大きな荷主が中国だという。
いま、この運河への影響力をめぐり、米中が火花を散らしている。アメリカが完成させた歴史上の経緯を念頭に、1999年にパナマへ移管する前と同様の支配権を取り戻したいアメリカのトランプ政権。対する中国の習近平国家主席は、巨額のインフラ投資を中核とする経済開発構想「一帯一路」を通じ、パナマを含む途上国への関与を強めようと意欲旺盛だ。
どちらも国策としてパナマ運河の覇権は譲れないが、ここへきて当のパナマが2月6日、一帯一路からの離脱を正式に宣言。離脱はイタリアに続く2カ国目となり、中国の構想に暗雲が差し始めた。
南米初参加のパナマ、「一帯一路は利益に適わない」と方針転換
香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙は2月、パナマが中国の一帯一路構想からの離脱を正式に表明したと報じた。パナマは2017年、台湾との断交と同時に中国と国交を樹立し、ラテンアメリカで初めて一帯一路に参加した。今回、大きな政策転換に踏み切った形だ。
パナマのホセ・ラウル・ムリーノ大統領は記者会見で、一帯一路構想に対する不満を露わにした。「そもそもなぜこの協定に署名したのか、その意図すら理解できない」と語るムリーノ氏。「これまでパナマに何か具体的な利益をもたらしただろうか。一帯一路構想による目に見える成果は何一つない」と述べる。
離脱表明は、アメリカのマルコ・ルビオ国務長官がパナマを訪問した直後のタイミングで行われた。ルビオ氏はかねて、運河両端の港を香港企業が運営している事態に懸念を表明。パナマが一帯一路からの離脱を表明したのを受け、ルビオ氏は「外交的勝利」を宣言している。
これを受け中国の傅聡(フー・ツォン)国連大使は、「遺憾の意」を表明。一帯一路は「政治的な意図を持つものではなく、発展途上国間の経済協力を促進するためのプラットフォームだ」と説明し、政治的影響力を懸念するアメリカの立場を批判した。
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