昨年末、B’zの『第75回NHK紅白歌合戦』出場が発表されるやいなや大きな話題を呼んだ。今なお国内音楽シーンのトップランナーであることを圧倒的なパフォーマンスで示した一方、稲葉浩志と松本孝弘のそれぞれのプロジェクトも見逃せないトピックだ。

 2025年には、稲葉とギタリストのスティーヴィー・サラスによるユニット INABA / SALASが8年ぶりのツアーを発表し、再始動を宣言。昨年は松本を中心に結成されたTMG(Tak Matsumoto Group)も20年ぶりに再始動し、ファンを驚かせた。これらのプロジェクトは、B’zとはまた異なる音楽性やアプローチを見せつけ、それぞれの表現力を際立たせる場でもある。今回はINABA / SALASとTMGに焦点を当て、両者の特徴とその中に見られる稲葉と松本の音楽的な個性を掘り下げていきたい。

INABA / SALASは“踊れるロック”で魅了する

 INABA / SALASは2016年の結成以来、ファンキーかつロックな楽曲を次々と発表し、B’zとは一線を画す独自の世界観を築き上げてきた。このユニットの特徴は、何といってもその軽快なサウンドによる“踊れるロック”であり、リズミカルなグルーヴを持つ点だ。B’zでは稲葉の鋭い歌唱と松本のメロディアスかつドラマティックで重厚なギターが融合し、極上のロックを生み出しているが、INABA / SALASでは稲葉がその声をより自由に操り、そこにスティーヴィー・サラスのファンキーでノリを重視したスタイルのギタープレイが絡む。サラスのギターが持つ奔放なカラフルさと松本の緻密で情感豊かなアプローチの違いが、INABA / SALASとB’zの明確な個性の差を際立たせている。

INABA / SALAS “EVERYWHERE”

 例えば、1stアルバム『CHUBBY GROOVE』に収録された「AISHI-AISARE」は、グルーヴ感あふれるベースラインとリズミカルなギターリフが印象的で、稲葉のエネルギッシュなボーカルが曲全体を牽引する。そしてサラスのギターは、リフを刻みながらもボーカルに呼応するようなフレーズを有機的に織り混ぜ、楽曲にアクセントを加えていく。稲葉のボーカルがその音像に溶け込みながらも主役として際立つのは、サラスの類まれな表現力によるところも大きいだろう。

INABA / SALAS “AISHI-AISARE”

WACOCA: People, Life, Style.