アングル:中国の人権NGO業務継続できず、米の対外援助凍結で

2月14日、 中国で反体制活動や人権、労働者の権利などに関する動きをモニターしている非政府組織(NGO)によると、トランプ米大統領(写真)が対外援助を90日間停止し、精査する大統領令を出したことで、数十に上るNGOが業務の継続が不可能になり、スタッフを解雇した。ホワイトハウスの大統領執務室で10日撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)

[北京 14日 ロイター] – 中国で反体制活動や人権、労働者の権利などに関する動きをモニターしている非政府組織(NGO)によると、トランプ米大統領が対外援助を90日間停止し、精査する大統領令を出したことで、数十に上るNGOが業務の継続が不可能になり、スタッフを解雇した。

こうしたNGOは、中国の習近平国家主席が少数民族や人権擁護派、弁護士に対して長年にわたり行ってきた弾圧を記録する上で重要な役割を担ってきた。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の中国担当副ディレクター、マヤ・ワン氏は「多くのNGOが不意を突かれた。米中両国がつばぜり合いを演じている以上、米国はたとえ資金の提供を減らしても中国関連プログラムを継続すると考えていたからだ」と指摘。「米国からこうした理念のための資金提供が止まることは国際的な市民社会にとって極めて大きな打撃になる」と問題視した。

資金凍結の影響を受けた人権NGOの一つが、米国に拠点を置く「フリーダムハウス」だ。米資金凍結により、台北の研究者が運営する「中国反体制モニター」プロジェクトが全面的な調査停止に追い込まれた。財務報告書によると、同NGOは2024年に米国政府から8000万ドルの資金助成を受けており、これは年間収入の88%に相当する。

中国反体制モニターは22年に稼働を始め、7000件超の抗議活動を追跡したデータベースとなっている。中国政府が景気減速や若年層における失業率の急上昇を巡る反政府活動を押さえ込もうとする中、ジャーナリストや中国研究者にとって重要なツールとなっている。

中国外務省はロイターの取材に「米機関の再編は彼らの内部の問題だ」との声明を出した。

<資金難>

ヒューマン・ライツ・ウォッチのワン氏は今回の資金凍結で中国の人権NGO数十団体が影響を受けたと推定している。NGOや草の根団体が同じ助成金でプロジェクトを進めているためだ。

中国の法律は国内のNGOが海外から資金を受け取ることを事実上禁止し、外国のNGOの活動も厳しく制限している。

公式統計によると米国は昨年、中国関連で1070万ドルの対外援助を約束し、うち大部分が米国際開発庁(USAID)を通じて実行された。また全体のほぼ半分にあたる520万ドルが民主主義、人権、ガバナンス関連のプロジェクトに充てられた。

ワン氏によると中国の人権・民主主義関連NGOの多くは長年、米国の資金に大きく依存してきた。民間の財団や企業からの寄付はこれらの分野を避ける傾向があるためだ。また、米国以外の国は純粋に人道目的のプロジェクトの支援に傾きがちだという。

USAIDの資金が具体的にどの団体やプロジェクトにどれだけ提供されたかについての詳細な情報は公表されていない。中国で活動する人権NGOの多くは中国政府から「外国政府の影響を過度に受けている」と非難されるのを避けるため、資金提供元の詳細を公表していない。

トランプ氏は援助凍結解除後に一部で資金提供が再開される可能性があると述べているが、どの資金が復活するかは不透明であり、人権NGOの間では資金の節約、追加資金の模索、さらには米国への依存低減に向けた取り組みが喫緊の課題となっている。

中国政府は以前から米政府がUSAIDや、米議会が出資する全米民主主義基金(NED)を通じてNGOを支援し、中国で「カラー革命(政権転覆)」を扇動しようとしていると非難している。中国国営中央テレビ(CCTV)は最近、「USAID:援助を口実にした干渉」というタイトルの特集を放送した。

中国で長年にわたり労働運動に取り組んできたリー・チアン氏が設立した米ニューヨーク拠点のNGO「チャイナ・レイバー・ウォッチ」は7人の職員が一時帰休扱いとなった。一部の職員は一時就労ビザで採用されており、中国に強制送還される恐れがあるという。

同NGOは21年以降、予算の約90%を米政府からの資金提供が占めた。リー氏によると、今年の運営費は前年の80万ドルから100万ドルに膨らむ見通しだ。

リー氏は「まるでわれわれのプロジェクトは重要ではない、活動は無意味だと言われたようなものだ」と述べた。「米政府を信頼し過ぎて、新たな資金源の確保を怠ってしまったと思い知った。これは戦略的なミスだ。本来ならもっと早く資金源の多様化を進めるべきだった」と悔やんでおり、他の資金提供先を探している。

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Laurie Chen is a China Correspondent at Reuters’ Beijing bureau, covering politics and general news. Before joining Reuters, she reported on China for six years at Agence France-Presse and the South China Morning Post in Hong Kong. She speaks fluent Mandarin.

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