12日の日本市場は円が下落。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が利下げを急がない考えを示したことに加え、米国の関税政策を巡る不透明感から売られ、円は主要10通貨に対して全面安となっている。債券は日本銀行の利上げ継続への警戒感から下落し、長期金利は約14年ぶりの高水準を更新した。株式は東証株価指数(TOPIX)が小幅下落。

  オーバーシー・チャイニーズ銀行(シンガポール)の為替ストラテジスト、クリストファー・ウォン氏は「円安は相互関税の不確実性によるもの」との見方を示す。「日本が打撃を受けるリスクがあり、円の短期的な見通しを複雑にする可能性がある」と言う。

  パウエルFRB議長は11日の上院銀行委員会の公聴会で「政策スタンスは景気抑制の度合いが以前より顕著に弱まっており、経済は強さを維持している」と述べ、政策金利の調整を急ぐ必要はないとの見解を示した。武藤容治経済産業相は12日の閣議後会見で、トランプ大統領が署名した鉄鋼・アルミニウム輸入への25%関税について、日本企業を除外するよう申し入れたと明らかにした。

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  新発10年債利回りは1.34%に上昇し、2011年以来の高水準を更新した。スワップ市場は7月の日銀利上げを8割弱の確率で織り込んでいるほか、年内におよそ1.3回の利上げを見込む。市場が想定する利上げ到達点を示すOISフォワード金利2年先1年物金利は1%を超える水準に上昇している。

12日の日本市場の為替・債券・株式相場の動き(午後2時12分現在)円は対ドルでニューヨーク終値比0.7%安の153円63銭長期国債先物3月物は一時前営業日比25銭安の139円77銭まで下落新発10年国債利回りは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.34%と、2011年以来の高水準TOPIXは0.2%安の2728.48日経平均株価は0.3%高の3万8930円47銭外国為替

  円相場は全面安。市場ではこれまで強かった反動で売られているとの見方も出ている。外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、パウエル議長の発言やトランプ大統領の関税政策などをきっかけに投機筋が円ロングを手じまっているのではないかと指摘する。

  米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したIMM通貨先物で、非商業部門の円ポジション(4日時点)が昨年12月以来の買い越しに転じていた。東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、日米首脳会談など円買い要因として警戒されたイベントを無風で通過し、「いったんは円ロングを解消し、ドルを買い戻す動きが出ている可能性がある」と言う。

  テクニカル面でもドル高・円安が進みやすいとの見方がある。大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、ドル・円が上値抵抗線だった200日移動平均線(152円75銭)を上回ったことがドル買い・円売り材料になっていると語る。

債券

  債券相場は下落。パウエルFRB議長の議会証言を受けた米国長期金利の上昇と、日銀の追加利上げ観測を背景に売りが優勢。10年物価連動国債入札は弱めの結果になったが、相場への影響は限られている。

  大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、朝方は中期債が弱かったが少し持ち直し、長期債が軟調だと指摘。物価連動債入札は「割安感がなく、いつもしっかり買っていた投資家の参加が乏しかったのか、弱い結果だった」と述べた。

  新発5年債利回りは一時0.995%、新発2年債利回りは一時0.80%と、08年以来の高水準を更新する場面があった。

   岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、5年債の1%や2年債の0.8%が節目として意識されていると指摘。「日銀の利上げ継続や利上げ到達点の上振れが警戒される中でも押し目買い需要が入っている」と言う。14日に5年債入札を控え買い進まれづらいものの、「中期金利の上昇が止まれば、10年金利だけが上昇していくこともないだろう」とみている。

株式

  株式はTOPIXが小幅安。世界貿易に対する懸念が続く中、欧州連合(EU)がトランプ大統領の関税に対抗措置を示唆したことを受け、自動車メーカー、商社などを中心に下落した。エムスリー、フジクラ、ソフトバンクなどが10日に発表した好調な決算を支えに、日経平均は小幅上昇している。

  T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは「自動車を含め、今日の市場は重たい。関税に対す懸念も続いており、先が見えない銘柄が多い」と話す。関税に関する否定的な感情が多くの輸出関連株にとっての円安メリットを上回ったと言う。

  日産自動車の株価は、台湾の鴻海精密工業が仏ルノーが保有する日産株の買い取りを検討しているとの報道を受けて一時8.9%下落した。東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは、台湾有事を念頭に経済安全保障面のリスクがあると指摘した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

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