韓国の尹錫悦大統領による「非常戒厳」宣布を巡り捜査している高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)が15日、尹氏の身柄を確保した。捜査員らが大統領公邸の敷地内に入り、尹氏に対する逮捕令状を執行した。

  韓国国会は先月14日、尹氏の非常戒厳宣布が憲法に違反するとして、同氏に対する弾劾訴追案を可決。尹氏の大統領としての職務は停止され、罷免か否かの決定が待たれている状況だ。

South Korea Descends Into Crisis After Lawmakers Overturn President's Declaration Of Martial Law

尹大統領

Source: South Korean Presidential Office/Getty Images

なぜ尹氏は拘束されたのか

  非常戒厳宣布を巡る内乱容疑に関する事情聴取に向けた出頭要請を尹氏が繰り返し拒んできたことから、逮捕令状が出されていた。現職大統領の逮捕は韓国史上初。韓国の憲法は、現職の大統領が罪に問われる可能性があるのは、反逆罪と内乱罪のみと定めている。

今後どうなるのか

   最大48時間、事情聴取のため拘束される可能性がある。捜査当局はその後、最長20日間の拘束を継続するため正式な令状を請求するか、あるいは釈放するか決定しなければならない。内乱罪で有罪となれば、尹氏は終身刑の判決を受ける可能性がある。また公算は非常に小さいものの、死刑が言い渡されることもあり得る。

Korean Investigators Move in Second Bid to Arrest President Yoon

大統領公邸の敷地内に入った当局関係者

Source: Bloomberg

弾劾裁判はどうなっているか

  憲法の下、弾劾が妥当かどうかの判断は憲法裁判所が下す。裁判は14日に開始され、6月までに決定が下される。

  弾劾裁判は、8人の裁判官が審理する。韓国の憲法に従い、尹氏の罷免には6人以上が賛成する必要がある。罷免が決定した場合、60日以内に大統領選が実施される。

大統領が弾劾された前例は

  韓国国会は2004年3月、当時の盧武鉉大統領に対し選挙法違反を理由に弾劾訴追案を可決した。大統領に対する弾劾訴追案の可決は、これが初めてだった。ただ憲法裁は約2カ月後に同氏を復職させている。憲法裁は同氏の選挙法違反を認定しながらも、罷免の理由としては不十分だと判断した。 

  国会による2度目の試みは成功している。16年に地位乱用を巡り当時の朴槿恵大統領に対する弾劾訴追案を可決。憲法裁は17年3月にこれを支持し、朴氏は韓国史上初めて大統領を罷免された。

尹氏の非常戒厳宣布に関する発言は

  尹氏は昨年12月12日、テレビ演説で、非常戒厳宣布の目的について、国を救い、「自由民主主義」を守り、国家機能を正常化することだったと主張した。野党の「反国家的」な動きや北朝鮮寄りの姿勢について国民に知らしめ、野党に警告を発する狙いがあったとも語っている。

今は誰が行政トップの責任を担っているのか

  韓悳洙首相が大統領職を代行していたが、同氏も12月27日に弾劾訴追された。弾劾裁判を行う憲法裁の欠員裁判官の任命に抵抗したことが、こうした動きにつながった。現在は崔相穆企画財政相が大統領代行を務めている。

原題:All About the South Korean President’s Legal Perils: QuickTake(抜粋)

 

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