新型コロナの第一波が押し寄せた去年3月以降、全国各地の自治体で、コロナ対策として、議会の一般質問の中止などが相次ぎました。コロナ陽性者数が減少傾向にある今年の6月議会でも、佐賀県内では太良町議会が唯一、去年に続いて一般質問を中止しました。どういう意図があったのでしょうか。今回の「ニュースここ掘れ」は、コロナ禍の議会について考えます。解説主幹の宮原さんです。

【宮原拓也解説主幹】太良町は人口8400人。県内では玄海町、大町町に続いて人口の少ない町です。また、職員数はほぼ100人。人口5千人から1万人規模の自治体は全国に95ありますが、この中でも職員数は下から数えた方が早い。とはいえ、私も最初は、議会は民主主義の根幹。いくらワクチン接種業務などで忙しいとはいえ、おかしいのではと疑問を感じました。永淵孝幸町長に、その背景を聞きました。

【永淵孝幸町長インタビュー】「コロナのワクチン接種について、まずは9月上旬を予定していた。ところが国から65歳以上は7月末に何とか終わらないかと相談があり、総務省からも電話があり、これは1ヵ月以上前倒ししなければ大変だなと、職員と協議した。議会となると資料作成、担当課長含めて業務が過多になっていくということで、一般質問の話が出て、議長に一般質問を今回はこういった事情でよかったら中止できないでしょうか、と。」

【宮原拓也解説主幹】コロナ業務以外でもいろいろな業務があるようだが?
【太良町・永淵孝幸町長】「昨年7月に豪雨災害で100ヵ所あまりの大きな被害があった。被害額はおよそ11億円。その工事を繰り越している。去年できなかったため。繰り越した分を早く終わらせて、もし今年も災害があれば費用は翌年に繰り越しできないので早く終わらなければならない。今年は梅雨に早く入ったので、これは大変だと。」

【宮原拓也解説主幹】整理しますと、太良町が業務過多になった理由は3つあるようです。まず、国からのワクチン接種前倒し要請があったこと。二つ目は、太良町では他の自治体と違って、町民から受けたワクチン予約の内容が一度町に戻ってきて、町の担当者が町内3カ所の病院に振り分ける作業を行っていること。さらに、三つめは町長が指摘していましたように、今年は去年よりほぼ1か月早く梅雨入りしたため、災害復旧工事も前倒しとなったことですね。

【キャスター】菅総理の肝いりでワクチン接種を急げ、という大号令がかかりましたが、こうした職員が手薄な小さな自治体を直撃している実態が分かりますね。【宮原拓也解説主幹】その通りですね。地方の小さい自治体の議会の在り方を聞きました。

【宮原拓也解説主幹】去年の6月議会に続いて、今回も省略ということだが議会軽視ではないか、という見方もできるが?
【太良町・永淵孝幸町長】「今回のコロナの件についていろいろな議案、補正予算を上げるとき支援事業なども議会の全員協議会に諮る。他の補助事業についても予算が伴うもの、伴わないもの全員協議会で話をする。一般質問はあくまでも1対1でのやりとり。しかし、そいうった事情を全員協議会の中で話をするというのは、全議員からいろいろな話が聞けるし、一般質問だけが議会活動ではないし、議案を出したとき、議案に対して議員の思いを話してもらえばいい。そこが一番大事なところでもあるのかなと。

【宮原拓也解説主幹】通常、議会は開会して一般質問、代表質問がある、というのが議会のパターンだが議会の形も考え直さないといけない?
【太良町・永淵孝幸町長】
「一般質問をやめた、というのはいろいろ批判があるというのは覚悟の上。一般質問をしたいような案件については、事前に議員に知らせようということで、今回は特にコロナの件については十分説明して町民にも各戸にチラシを配って知らせるようにしている。」

【宮原拓也解説主幹】地方議会は年4回の本会議が開かれます。しかし、大きな課題がある時ばかりではない。確かに、一般質問を飛ばすというのは、異常事態ではありますが、議会側との協議があれば、緊急時の特例として「簡略型議会」というのも検討していいと思います。一方で地方議会での質疑、答弁というのは、形骸化が言われて久しい。議員側のパーフォーマンスだったり、行政側との馴れ合いでの質疑応答が多く、「学芸会」との批判も強いんです。コロナはある意味で、日常生活を見直すいい機会とも言えますが、議会もしかりです。人口減で地方は疲弊しています。太良町の場合も、毎年100人が減り続けています。町の仕組み、行政手法、議会の在り方など、コロナを機に新しい枠組みを考えるいい機会かもしれません。

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