5月7日、彩の国さいたま芸術劇場で
『ハムレット』の公演が始まりました。
新たにスタートした「彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd」の第一作です。

シリーズの芸術監督を務める俳優の吉田鋼太郎さんに、
舞台や新シリーズへの思いを聞きました。

『ハムレット』は、
デンマークの王子・ハムレットの苦悩を描いた物語です。

叔父のクローディアスが国王の父を毒殺し、
新たな国王となったことを知ったハムレットは、叔父への復讐を企てます。

(彩の国シェイクスピア・シリーズ 吉田鋼太郎芸術監督)
「僕が一番好きな作品、シェイクスピアの中でね。
 世の中のあらゆる戯曲の中でハムレットが一番好きだし、
 よくぞこんなものを人間が書いたなと思うような本なので
 新しいシリーズの第一弾でやりたいと迷いなく決めていました」

主役のハムレットを演じるのは柿澤勇人さんです。

新シリーズの第1作に『ハムレット』を選んだのは、
「役者ありきだった」とも吉田監督は話します。

(彩の国シェイクスピア・シリーズ 吉田鋼太郎芸術監督)
「ハムレットをやれる役者は本当に限られている。
 選ばれた俳優でないとできない。
 知性であり感性であり教養であり、肉体的な瞬発力であり持続力であり、
 ありとあらゆる俳優にとって必要なものを兼ね備えていないとできない。
 たくさんの役者がいますけど、見回してみるとやっぱり僕の中では、
 兼ね備えてる人間のトップが柿澤くんなんですよね」

(柿澤勇人さん)
「(上演時間)3時間半のうち、3時間ずっとしゃべっているんですね。
 体も痛いし 心も壊れているし もうボロボロ。
 満身創痍と自分で言うのも変なんですけど。
 それくらい追い込まないとできない」

(彩の国シェイクスピア・シリーズ 吉田鋼太郎芸術監督)
「いろいろな演出方法があると思うんですが、
 ハムレットをやるにしてもすごく肉体を酷使し、
 心も体も酷使しなければできない表現の仕方を
 柿澤くんであればやれると思った」

吉田監督が演じるのは、
ハムレットと敵対する叔父のクローディアスです。

(彩の国シェイクスピア・シリーズ 吉田鋼太郎芸術監督)
「シェイクスピアも優しくて
(クローディアスは)本当に血も涙もない冷血漢ではなくて、
 悩むところを一つ作っているんですよね
『自分は祈りたい 本当は祈りたいんだ、だが もう遅い』と。
 そこは非常に共感できる。
 なので 非常に役作りとしては難しいですね。
 悪いなら悪いで書いてくればよかったのに、いいところもある。
 この兼ね合いが役作りとして難しくもあり、
 やりがいがあるところでもありますよね」

新たに始まった「彩の国シェイクスピア・シリーズ」。

前回のシリーズは、
演出家の故・蜷川幸雄さんが芸術監督だった1998年に始まりました。

蜷川さんの死後は吉田鋼太郎さんが引き継ぎ、
シェイクスピアの37あるすべての戯曲を上演して、
去年、完結しました。

ただ、継続を望む声が多く、
新たなシリーズをスタートすることになりました。

(彩の国シェイクスピア・シリーズ 吉田鋼太郎芸術監督)
「重大な責任と重圧を感じている」

「蜷川さんから学んだものは絶対に僕は手放せないものだし、
 自然とにじみ出てくるものなので、
『蜷川さんを継承しなきゃ』とか、
 そのことは特に意識していないですけども、
 都心にある劇場ではなくて、離れたところにある劇場に
 これだけお客様が来てくださるという状況を
 作り出したのは蜷川さんなので、
 そこは絶対にお客様を減らしちゃいけないと思いますね」

「シェイクスピアは日本に浸透しているようで浸透していない」
「浸透するのは無理なのかもしれませんがやり続けます」
「だっておもしろいからねシェイクスピアはね」

【シェイクスピア演劇の魅力】
「大変なんでよ演じることも作っていくことも演出することも。
 でも、公演が終わるともう二度とやりたくない思うんですよね。
「でもひと月、ふた月すると、また『ちょっとやりたいな』と。
 つらい目に遭わされたほうが過酷なほうがやる気が出るみたいな。
 それの最高峰がシェイクスピアですね」

「やり方が決まっていないですから、シェイクスピアって。
 ト書きもないですし。指定がないですから自由なんですよね。
 でも その自由が怖いところで、
 それを おもしろくなくやってしまうと。
『こんなもんなんだ』と思われてしまった歴史もあると思うんですよ。
 それを蜷川さんは『シェイクスピアは大衆演劇だ』と言い切って、
 老若男女みんなが楽しめる芝居にしようと努力をなさっていた旅の途中だったんでね。
 そのことは受け継いで 続けていきたいですね」

中でも、「世界最高峰の演劇」と評されるのが『ハムレット』です。

(彩の国シェイクスピア・シリーズ 吉田鋼太郎芸術監督)
「彼が『復讐しなければ しなければ』としゃべればしゃべるほど、
 復讐というものがどんどん遠のいていく」
 復讐劇と言いながら“復讐をしちゃいけない劇”を書いてるんじゃないかと。
 それをこんなにおもしろおかしく、
 こんなに人々の興味を引き付けるようなせりふを満載にしてエンターテインメントにして
 提示しているすごい芝居なんだなと思います」

『ハムレット』は、彩の国さいたま芸術劇場で、今月26日まで上演されます。

(彩の国シェイクスピア・シリーズ 吉田鋼太郎芸術監督)
「柿澤勇人ようなハムレットは、おそらくもう見られないんじゃないか。
 すべての人間が持ってるものの限界に挑戦をしている人間を
 目の前でもし見たいとすれば、ぜひ一回見ていただきたい」

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6 Comments

  1. 先日観ました!柿澤勇人ハムレット、本当に素晴らしかった✨一人でも多くの方にこの『ハムレット』を観ていただきたいです!!🥰

  2. 有名なセリフをどう訳すかというのがあるんだけど、「これは生きるか死ぬかの問題なのだ」というのはどうでしょう?他の伝統的な訳より意味が明瞭になる気がするんですが。

  3. 鋼太郎さんのインタビューを拝見し、期待が高まりました!鋼太郎さんの全幅の信頼を得ている柿澤シェイクスピアを目撃する日を楽しみにしています!

  4. 役者はね、自分が出演しながら演出なんかしたら駄目なんだよ。

    自分の演技の薄さ荒さを訂正出来ないから。
    往々にして、それが一番舞台の質を下げてしまう。

    吉田さん、もともとそんなに頭抜けた力のある俳優ではないのだから。

  5. 今日見ました。素晴らしかった。すべて。高橋さんの叫びも、オフィーリアも。

    柿澤さん、あなたは素晴らしい。品がある。声も意味も通った。

    鎌倉殿も光っていました。

  6. 大衆演劇、と吉田さんはおっしゃっていますが、実際に観ると、 骨格のしっかりした雄渾な群像劇でした。ハムレットはもちろん、全ての登場人物の奥行きと血の通った存在感が素晴らしく、この戯曲の奥深さ、果てしなさが自然と感じられた。言葉によって飛翔する演劇、という5月16日の日経新聞の劇評が的確であると感じます。