東日本大震災で、震源から遠く離れた名古屋の高層ビルにいた人たちが、長くゆっくりとした揺れを経験していました。揺れの正体は「長周期地震動」。取材を進めると、東海地方のある場所で「長周期地震動」が発生しやすいことが分かりました。
「船酔い状態に…」長くゆっくりとした揺れが11年前の名古屋で起きていた
※動画には東日本大震災の地震の映像が含まれます。
2011年の東日本大震では、震源の宮城県沖に近い地域を大きな揺れが襲いました。震源から約400km離れた東京・新宿でも震度5弱を観測。高さ200m級の超高層ビルが横に大きくしなり、10分以上に渡って揺れ続けたといいます。
「2~6秒の周期で建物が揺れる地震動のことを長周期地震動といいます」(名古屋大学 災害対策室 護雅史教授)
長く大きな横揺れの正体は、「長周期地震動」だと専門家は指摘します。
「地面では、5秒や数秒の揺れはあまり気づかないが、地面の揺れがたとえ小さくても、10回、20回と揺すられることによって、建物の上部ではどんどんどんどん揺れが大きくなってくる」(護雅史教授)
長周期地震動は、周期の短い地震よりも遠くまで届き、長い間揺れ続ける特徴があります。東日本大震災では、震源から600km以上離れた名古屋の高層ビルでも、地上で感じる以上の揺れが襲ったといいます。
「ルーセントタワーの32階で仕事をしていた。最初に結構大きな揺れが来た」(名古屋で長周期地震動を経験した人)
「船に乗っているようなゆっくりとした揺れが何分か続いて、船酔い状態になった社員も何人かいた」
「横揺れがすごくて、長く大きく揺れていた印象がある」(名古屋で長周期地震動を経験した人)
コピー機が滑るように動く…長周期地震動の危険性
長周期地震動を再現した実験映像を見ると、揺れに対して人は立っていることができません。さらに、書棚なども倒れてきて、下敷きになる恐れがあります。何度も左右に揺さぶられることで、キャスター付きのコピー機は勢いよく動き、周囲に激しくぶつかります。
「東日本大震災の名古屋、新宿でもあれだけ揺れるため、当然、高層建物は遠い地震でも家具は動き回る。なるべく建物の中の安全な場所で、揺れが収まるまで身の安全を確保することが大事」(護雅史教授)
東海地方で「長くゆっくりとした揺れ」が起きやすいのは
愛知県がある濃尾平野は、大昔は海だったため、地面の下には軟弱な地盤が厚く堆積しています。
そのため、地震が起きた場合、地震の波は軟弱な地盤で増幅し、固い岩盤で覆われた盆地の中で長く揺れ続けることになります。
名古屋駅周辺などの高層の建物では、より大きく長く揺れる可能性があります。
(9月7日 18:45~放送 メ~テレ「池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ」より)
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