
第23回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式が6月6日、東京・築地の浜離宮朝日ホールであった。マンガ大賞「その女、ジルバ」の作者有間しのぶさんに鉄腕アトムのブロンズ像と副賞200万円が、新生賞の山田参助さん、短編賞の小山健さん、特別賞のさいとう・たかをさんにもブロンズ像と100万円が贈られた。
アラフォー女性が高齢女性ばかりのバーでホステスとして働き始め、ブラジル移民だったママの歴史に触れることで戦中戦後の苦難の歴史も描いた「その女、ジルバ」。有間しのぶさんは「今まではギャグとかちょっとHなものを描いていたが、今回は色んな方に取材して、その方たちが背負ってきた苦しさや悲しさ、怒りを受け止めた。これを物語にすることで、苦しさを喜びに変えられるんじゃないかと手応えを感じられた」とスピーチした。
代表作「ゴルゴ13」が昨年に連載50周年を迎えたさいとう・たかをさんは「私は手塚先生にすごく恩義を感じている」。家庭の事情で早くから働くことになり、夢だった映画制作を諦めていた時に手塚治虫の「新宝島」を読んだ。「紙でも映画ができると思い、これしかないと思ってこの年までやってきた。この年になるとどこまで描けるか分からないけど頑張ってやろうという気持ち」と話した。
敗戦直後の闇市を舞台にした「あれよ星屑(ほしくず)」で新生賞の山田参助さんは「子どもの頃に児童文学やテレビドラマで戦争モノに触れてきたが、1972年生まれの私と同世代と話すと意外とそれを覚えていない。大戦後の日本を漫画で描きたいとずっと思っていた」と制作秘話を語った。
「生理ちゃん」は女性の生理をキャラクター化してウェブ漫画から始まった。小山健さんは「出版社に持ち込まずネットで世に出る今風で軟派なやり方が、硬派な先生方からどう見られるか不安だった。仲間に入れてもらえたようでうれしいです」と一安心。デリケートなテーマだが、当初はギャグ漫画で深く考えていなかったといい「回を重ねるにつれて取材が必要になり、話を聞くうちにどうしようもなく心に芽生えてくるものがあった。世の中がもっとこうなればいいのになと思うことがあるが、娯楽作品として読んでもらうには作者が声高に言うのはあれなので言いません!」と話して会場を沸かせた。

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