11日の金曜日で東日本大震災から11年になります。東海地方は、南海トラフ地震で、津波による大きな被害が想定されています。津波から避難はこの11年でどう進んできたのか取材しました。

 2021年12月、愛知県田原市の小中山地区に津波からの一時避難施設「津波避難タワー」が完成しました。

 タワーの高さは3.6m、591人を受け入れます。これで地区の避難施設がすべてそろいました。

「震度5弱以上の揺れがきたら解錠ボックスが開きます。中にはタワーの扉の鍵が入っていますので開けてもらいます」(田原市の職員)

 屋上には備蓄倉庫があり、食料のほか、着替えに使う1人用のシェルターや簡易トイレなどが備えられています。

「この地区には近くに山がないし高台も少ないので、津波がきた時に逃げる場所がない。一時的に避難できる場所ができたのはほっとしています」(田原市小中山地区 自主防災会 小川悟さん)

津波避難タワーは愛知で10カ所 三重で26カ所整備

 東日本大震災の後、各地の海沿いの自治体では津波からの一時避難施設の整備が進められました。

 愛知県と三重県によりますと2021年4月時点で、津波避難タワーは愛知で10カ所、三重で26カ所整備されています。このほか、民間施設の屋上など避難者を受け入れられるようにしているところもあります。
 
 施設づくりが進む一方、課題は残っています。

「かなり高齢化が進んでいますので。この前、避難訓練をした時には車いすで来る方はいなかったけれど、現実には実際に起きた場合にはそういう方が結構いると思う。そういう方への配慮もしていかなくてはいけないと思っています」(自主防災会 小川悟さん)

車椅子の高齢者どう避難 コロナも想定 豊橋市の高齢者施設の場合

 愛知県豊橋市の海沿いにある高齢者施設「王寿園」。施設の利用者には車いすの人も多くいます。

「基本的にはエレベーターは災害時は使えませんので、階段が避難ルートになります」(王寿園 大井孝浩さん)

 王寿園は1階がデイサービス、2階3階が介護を必要とする特別養護老人ホーム。4階が自立した生活を支援するケアハウスです。

「こちらの施設は(理論上)最大想定で2階の床が浸水するぐらいといわれているので、1階・2階の人は3階に避難する訓練を行っています」(大井孝浩さん)

 もし、施設で新型コロナウイルスの感染者が出た場合、避難への影響は?

「たまたま大津波が来た時に陽性者がいる状態となると、ふだんより職員数が20%ぐらい少ない可能性はあります。ただ幸いこの施設は法人の本部も兼ねているので、事務関係の職員が多く1階で仕事をしているので、災害時にその職員が利用者が上階に上がる介助を手伝えるので」(大井孝浩さん)

地元のサーファーや企業と協力して高台への複数ルートの避難経路作り

 王寿園では施設だけでなく、サーファーや釣り人といった海岸利用者と一緒に地域の防災活動にも力を入れています。

「ここが避難経路の『ルート1』になります。看板は豊橋市がつけてくれましや」(大井孝浩さん)

 海岸から離れるための道路は限られているため、山を拓き、避難経路を2つつくりました。

「海岸でウミガメ保護活動をしているNPO法人や地元のサーファーさん、地元企業が研修で避難経路作りをしてくれています」(大井孝浩さん)

Qだいたいどれぐらいで頂上まで
「4分ぐらい。どこの避難経路も4分から5分ぐらいで上がれるようになっています。全部登ると海抜40mほどの高台に着く」(大井孝浩さん)

Q避難経路が崩落した場合は?
「その場合は近くの避難経路に行ってもらう。実際地震が起きた時にどこの道が崩れるかはその時しかわからない。なるべく近くの道で崩れていないところを登っていく」(大井孝浩さん)

普段から避難経路を利用してもらうことを心掛ける

 頂上では地元の有志らで見晴らし台づくりも進めています。

「景色が見えるスポットを作って、普段から景色を見に海岸利用者が来てくれるスポットになればいいなと思っています」(大井孝浩さん)

 普段から避難経路を利用してもらうことで、いざというときの避難につなげたい考えです。

「東日本大震災が起きた直後は『なるべく速く・なるべく高さを稼ぐ』、そこまでがゴールだったのですけれど。それから進化して、高台に登って地震が落ち着いたらみんなで避難所を目指す。避難所先でボランティア活動をしたり、避難所の開設・運営をしていくことがゴールに変わりましたね」(大井孝浩さん)

 震災から11年、地震や津波への備え方は次のステージに入りつつあります

(3月8日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)

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