東京電力・福島第一原発にたまり続ける放射性物質トリチウムを含む“処理水”について、政府は13日、海に流して処分することを正式に決めました。
菅総理:「基準をはるかに上回る安全性を確保し、政府をあげて風評対策を徹底することを前提に、海洋放出が現実的と判断し、基本方針を取りまとめた」
放出作業は2年後をめどに始める予定です。モニタリングを強化するほか、地元の漁業や観光、農林業を支援すること、それでも風評被害が生じた場合は、東京電力が賠償を行うことなどを基本方針に盛り込みました。
菅総理:「タンクが増加し、敷地がひっ迫していることも事実。廃炉を進め、復興を成し遂げるためには、避けて通れない課題である」
政府は、処理水を海に流すにあたっては、トリチウムの濃度を、国の基準の40分の1、WHO=世界保健機関が示す飲料水の基準の約7分の1まで薄めるとしています。雨水や海水など、自然界にも存在するトリチウム。そのトリチウムを含んだ水は、世界各国の原発から発生していて、海などに放出されているのが現状です。しかし、これまで漁業関係者からは、反対の声が上がっていました。風評被害を懸念しているのです。
漁業関係者:「今まで10年間、地道に払拭するために、みんな努力してきた。海洋放出だっていうことになれば、消費者がどういう反応を示すか。これが一番怖い」
梶山経済産業大臣は13日、福島県いわき市内で福島県漁業協同組合連合会の野崎野崎哲会長らと面会し、説明を行いました。野崎会長は、国と東電が2015年に「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」とした約束を反故にしたとして抗議しました。
福島県漁業協同組合連合会・野崎哲会長:「改めて、福島県の漁業者の意思として、処理水の海洋放出に反対したい。漁業は、海を生業とする産業ではあるが、その土地を離れて成り立つことはできない」
いわき市にある大川魚店は、今月、県の漁連が、本格操業に向けた移行期間に入ったこともあり、軌道に乗り始めたといいます。その矢先の、国の決定です。
大川魚店・大川勝正社長:「国と東電に対しては、処理水というのは、しっかりろ過された水を、海水で希釈して流す作業なので、人体に影響のない水であるという情報発信をしっかりやってほしい。僕らとか水産業界、この話は十分理解していると思う。それこそ30年、40年というスパンで水を流し続けるという話なので、多くの国民の方が知る知識になってほしい」
こうした声に、政府はどう応えていくのでしょうか。震災直後から現地で対策に当たる資源エネルギー庁の木野対策官は、こう話します。
資源エネルギー庁廃炉・汚染水・処理水対策・木野正登氏:「理解されるように我々が工夫しないといけない。『俺たちは伝えているから分かれ』というやり方ではダメで、分かっていただくために、どう説明を工夫できるか、どう分かりやすく説明していけるか。漁業者を切り捨てるということはなくて、より一層漁業を復興させるために、我々政府も最大限努力するということだから、矛盾はしないと思っている」
日本政府の決定にIAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は「この重要な発表を歓迎する」とビデオメッセージを発表。アメリカ国務省も声明で「国際的に受け入れられる原子力安全基準にのっとった手法を採用したと思われる」と、日本の決定を支持しました。一方、韓国や中国、台湾が決定を非難する発表や談話を出しています。
梶山経済産業大臣:「実際の放出が始まるまでに2年程度の時間がかかる。その間もしっかりと議論を進めていく。説明を進めていくことに尽きる。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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