トンガ沖の噴火で発生した津波による被害をうけた岩手県宮古市のサケ漁だが、気候変動などによる記録的な不漁に追い打ちをかけられた状態となっている。
こうした中、沿岸では地元産のイクラが思うように提供できない店も出始めている。

1月15日、トンガ諸島の海底火山噴火で起きた津波が川をさかのぼり、サケ漁の網に押し寄せ、杭や網が音を立てて流された。
川に網を張りサケを獲る伝統的な「川留め漁」の卵を採るためのサケを水揚げする施設が壊された。
漁を管理する組合では、ロープを渡して網を張るという急ごしらえをして、被災から5日後に漁を再開している。

そもそも近年のサケ漁は「深刻な不漁」という問題に直面していて、今回、追い打ちをかけられた形だ。

2021年度のサケ漁は1月20日時点で411トンと、ピーク時だった1996年度の7万3000トンの0.5%、過去最低だった2020年度に比べても2割にとどまっていて、2022年度の稚魚放流もままならない危機的状況だ。

県漁連 大井誠治会長
「サケは基幹産業、最も経済効果がある。(各漁協で)赤字決算が出てくるのではないか」

先日のトンガ津波の被害も、稚魚放流の卵の確保に影響が出るとみられている。

報告:馬久地杜行 記者
「色鮮やかなイクラ丼。しかし提供するレストランも複雑な事情を抱えています」

陸前高田市の「道の駅高田松原」。
レストラン「たかたのごはん」の1番人気は「たかた丼」だ。
三陸のかき・めかぶ・そしてイクラを利益度外視で提供するのが売りだった。
しかし、三陸産のイクラの在庫が少なくなってきたことから苦渋の決断をした。

道の駅 高田松原 竹田耕大さん
「三陸産と外国産の2種類を使用することになった」

オレンジに近いのが三陸産、赤っぽいのがロシア産だ。
レストランではこれまで最高級の三陸産だけを提供してきたが、今まで通りの入荷が見通せないため、1月中旬からロシア産と一緒に出すことになった。

道の駅高田松原 竹田耕大さん
「三陸のおいしいイクラを満足いくまで食べてもらいたいが、そういったことができないのは残念。こういった機会だからこそ産地の違いを楽しんでもらえたら」

影響が広がっているサケの不漁。
漁獲量の低迷はすぐには回復しないと見られていて、その対策として始まっているのがサーモンの養殖だ。
県内の沿岸では試験も含めて4カ所で、トラウトサーモンやギンザケをいけすで育てて出荷する事業が始まっている。

このうち、宮古市は3年前から「宮古トラウトサーモン」の養殖に取り組んでいて、2022年はいけすを増やして漁獲量を120トンに増やしたいとしている。

宮古市水産課 佐々木勝利課長
「宮古市魚市場の(春~夏の)閑散期に水揚げできるのも大きな理由の一つ」

サケの穴を完全に埋めることは難しいものの、新たな水産資源として注目されている。

沿岸の発展を支えてきたサケ漁。
大きな課題に直面しながらも、懸命な努力が続けられている。

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