WHO=世界保健機関は、南アフリカで急拡大している新型コロナの新たな変異ウイルスを「懸念される変異株」に分類し、「オミクロン株」と命名しました。この「オミクロン株」には感染力が高く、ワクチンの効果が低下する可能性が指摘されています。一体なぜ?変異によって感染力が高くなるのか?ワクチンの効果が低下する可能性があるのか?専門家にききました。
■懸念される変異株「オミクロン株」
南波雅俊キャスター:
まさに世界中で緊張が高まっている「オミクロン株」についてお伝えします。WHO=世界保健機関は11月26日、南アフリカで拡大している変異ウイルスを「オミクロン株」と名付けました。WHOはデルタ株と同じ、最も警戒度が高い「懸念される変異株」に指定しています。これに伴って、日本の国立感染症研究所も同じ「懸念される変異株」と位置づけました。
このオミクロン株はさらに新たな国で確認されて、29日までに世界の14の国と地域で確認されています。ヨーロッパをはじめ、カナダやオーストラリアなどでも確認されているんですが、そんな中、G7の議長国イギリス政府は、29日夜にG7の保険相を緊急招集してオンラインで会合を行うということなんです。海外では、南アフリカや周辺国からの入国制限も行われている中、日本では岸田総理が29日午後1時すぎに外国人の入国について、「30日の午前0時より、全世界を対象に禁止いたします」と話しました。
■オミクロン株の感染力は?
最も気になるのはオミクロン株の感染力なんですが、国立感染症研究所によりますと、アルファ株・ガンマ株・ラムダ株との共通の変異がある。この変異があることによって感染や伝播性を高める可能性があると懸念しています。
実際に南アフリカの陽性者の数(7日間平均)ですが、8月には1万人を超えていた時期もありましたが、グーッと減ってきてここ最近は200人台という週もあったそうなんです。ところが、11月26日までの7日間平均は3571.6人と急激に増えているんです。こういった状況について、南アフリカのラマポーザ大統領は「どの変異株よりも変異が著しい。国内で感染が確認された後、感染者が急増した」と話しています。
急増という意味ではこの置き換わる速さです。イギリスのフィナンシャル・タイムズの分析によりますと、南アフリカでデルタ株に80%感染が置き変わるまでに75日かかったということなんですが、オミクロン株については80%置き換わるまで、15日しかからなかったということで、まさに驚異的なスピードで感染が拡大しているという状況が見てとれます。
ホラン千秋キャスター:
この“置き換わりが早い”ということは感染力が高いということを示しているんですか?
国際医療福祉大学 感染症学講座主任教授 松本哲哉医師:
デルタ株の勢いよりもさらに上回って多くの割合を占めている、それも短期間で、ということですから、やはりそれは感染力が強いということを示してると思います。
ホランキャスター:
感染力が強い=重症化しやすいというわけではないんですよね?
松本哲哉医師:
「感染力」と「重症化」それから「抗体を逃れる力」というのはそれぞれ要素は別のものですので、同じように動くわけではありません。ただこれを見ると感染力は確かに強そうだと、それ以外のことに関してはまだはっきりわからない部分もあると思います。
井上貴博キャスター:
可能性の話なんですが、ウイルスは生き延びることを考えると感染力を高める。そして多くの人にうつっていく。でも今度、強毒化しすぎると、人を死に至らしめてしまっては感染も広がっていかないので、感染力を高めて弱毒化していく方向に変異は収れんしていくという、そういう一般論もあるわけですか?
松本哲哉医師:
そういう形の変異もありますよね。ただ必ずしもウイルスというのはそれぞれ意思を持って変異していくわけじゃなくて、それぞれ変異したものでそのときにちょうど優性のものがどんどん広がっていくので、強くなる場合もあれば弱くなるものもあると、そういうふうなことで必ずしも広がったもの全部が弱くなるとは限らないわけです。
ホランキャスター:
どう変異するかというのは偶然の産物みたいなものなんですか?
松本哲哉医師:
おっしゃる通り、変異というのはもう遺伝子のどこかの部分が変わる。それはどこが変わるかは決まっていない。そして変わったらそれが重要なポイントで変わったものであれば、何か性質まで変えてしまう、ということだと思います。
■ワクチン効果低下の可能性?
南波雅俊キャスター:
まさに感染力とともに重要になってくるのはワクチンの効果というところです。まずオミクロン株の最大の特徴から見ていきます。そもそもウイルスが感染するときにはウイルスの表面にある突起物、スパイクタンパク質と呼ばれるものが人の細胞と結合し、そこからウイルスが細胞に侵入して感染が起きる。オミクロン株はこれまで確認されている中で最も多い30の変異があるとされています。実際に国立感染症研究所が発表している資料の中にこんな実験の結果が載っていました。「スパイクタンパク質に人工的に20の変位を与えた場合、免疫逃避を確認」。つまり、ワクチンの抗体などが効かなくなるという実験の結果もあるんです。まだわからないことは当然多いんですが、国立感染症研究所はワクチン効果の低下の可能性に懸念を示しているということなんです。
ワクチンについてなんですが、ロイター通信によりますと、アメリカのファイザー社とドイツのビオンテック社は、自社のワクチンのオミクロン株に対する有効性を現在検証していて、2週間以内にデータが得られるということです。そして、ワクチンが効かない場合には6週間以内に再設計をして、100日以内に供給をしていくという方針を発表しているということです。
ホランキャスター:
仮に効かなかったとしても再設計は6週間でできてしまうものなんですね。
松本哲哉医師:
再設計は6週間でできるかもしれませんが、実際に製品としてそれを作って、多く供給するというまではさらにもうちょっと時間がかかりますので。100日以内に供給といっても十分な量を供給できるかどうかわかりませんから、そういう意味では今までよりはだいぶ早いですけど、安心できるわけではないと思います。
井上キャスター:
オミクロン株の感染力が高いというのは間違いなさそうですが、症状はどうなのか。極論、どれだけ広がっても無症状であればそこまで恐れる必要はないですし、でも広がって重症者も広がるとこれは大変だと。症状が大変重要なのかなという気もするんですが。
松本哲哉医師:
そうですね。ただ症状というのはもっと多くの感染者数のデータを集めて、その中で例えばお亡くなりになる方、あるいは無症状の方という数字を出さないとなかなか評価できないので、これから正式な評価が出てくるんじゃないかと思います。(29日19:00)
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