医師として新型コロナの治療にあたっている、夏川草介さんに話を聞きます。

夏川さんは、ベストセラー小説『神様のカルテ』で知られる作家で、新型コロナ治療の最前線を描いた『臨床の砦』を今年4月に出版しています。

夏川さんの病院は、長野県内の感染症指定医療機関で、中等症の患者を中心に受け入れています。元々のコロナ病数は6床でしたが、現在は37床にまで増やしていて、医師10人ほどで対応しています。

(Q.現場は今、どんな状況ですか?)
夏川草介さん:「8月半ばくらいから、ほぼ満床状態が続いています。ある程度、大きな肺炎がある人でも、その日は入院できず、待って頂く状態で、何とかギリギリ回しているという感じです。抗体カクテル療法の話も出てきて、来週にはさらに増床することを検討しています。人出は大丈夫とはとても言えません。呼吸器内科の先生がいない病院なので、ある意味で、専門外の医師たちで何とか耐えている状況です」

夏川さんは、こうしたコロナ治療の最前線の様子を小説『臨床の砦』にまとめました。執筆したのは、今年1月3日から2月1日、第3波の最中です。

(Q.どんな思いで、この本を書きましたか?)

夏川草介さん:「第3波は、見たことのない医療現場でした。たくさんの患者が他の病院で診療を断られて当院に押し寄せ、列を作っていました。また、高齢者の方がたくさん入院して、治療法もないままに亡くなる人もたくさんいました。亡くなる時も家族に会えないまま、孤独のまま亡くなっていく状況でした。20年近く医者をやっていますが、初めて見るような現場で、何かものを書かないと前に進めないという雰囲気が自分の実感で、書き始めるきっかけでした。医療現場に戻りたくないという感覚が出てきている状態でした」

(Q.第3波を経て、さらに感染者が増えている状況ですが、当時と比べて課題はありますか?)

夏川草介さん:「課題は山積みです。でも、良くなっている部分もたくさんあります。すべてが悪い状況にいっている訳ではありません。第3波の時よりも患者の数は確かに増えていますが、我々にはたくさんの武器があります。レムデシビルや抗体カクテル療法をはじめとした色んな薬があります。第3波のころであれば、救えなかったような大きな肺炎の患者も、きっちり治療すれば、かなり救命できることが分かっていますし、協力病院も増えています。そういう意味では、困っている部分ももちろんありますが、今は良い面に目を向けて頑張る時だと思ってやっています」

(Q.夏川さんが今、伝えたいことはなんですか?)

夏川草介さん:「診療現場も、その外側もそうですが、怒りや不信、不満といった負の感情があふれていると思います。実際にそうなる気持ちも分かりますし、インターネットにもそういう情報があふれています。今、こんなことを言うのもあれですが、テレビだってどうしても怖い情報が多くなっている状態です。でも、良くなっている部分も確かにあります。皆が自分の都合をぶつけ合っても、必ずしもうまくいく訳ではないという思いがあります。怖い情報から少し距離を取って、皆で力を合わせていく。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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