板倉)子どもの間でも感染が広がり自宅療養者数も増え続けていく中、今その現場では何が起きているんでしょうか。ここからはコロナ患者の往診を行う、
「やまと診療所」の石川元直医師にお話を伺います。

●高止まり・・・ 東京の自宅療養者2万4083人

板倉)
東京の自宅療養数は高止まりという状況ですけれども、石川さんの診療所がある板橋区は自宅療養者はどのような状況でしょうか?

石川医師)
現在、板橋区では約1600名の方が自宅療養中で、そのうち入院待機中または症状が重くて毎日フォローが必要な方が250名ほどいらっしゃいます。

板倉)
石川さんは、多いときに1日何回ぐらい往診を行ってるんですか?

石川医師)
板橋区全体で連日10件から20件ほどの往診が発生しております。

●自宅療養者の往診は若者中心

板倉)
その東京の感染者数ですけれども、その感染者に占める割合を年代別で見ていきますと20代30代で半分近くになってるわけです。石川さんの所では患者さんはどのような状況ですか?

石川医師)
そうですね、全くこのグラフと同様で、特にワクチンを打っていない20代から40代が中心となっております。

板倉)
そういった若い人たちの症状というのは具体的にどのようなものが出てるんでしょうか?

石川医師)
まず、発熱があって、咳、呼吸困難、そして人によっては下痢、吐き気などといった症状が続いて、ご飯が全く取れない、水分も取れないという状況になります。
そして皆さんに共通するのが、この先どうなってしまうんだろうかっていう不安があるということです。

板倉)
重症化してしまってもなかなか入院できない、入院先に何回も断られるっていう状況がやはり起きているんですか?

石川医師)
はい。連日それに非常に苦労しております。今は自宅療養中の患者さんが苦しくなって救急車を呼んでも、入院どころか病院にすらたどり着かないということが半数以上起こるという異常事態になっております。
通常、私たちは保健所からの依頼で訪問に伺うんですけども、最近では救急隊、救急搬送した救急隊が病院が見つからないから、行ってほしいという、そういった依頼も増えてきております。先日経験したケースで、基礎疾患に糖尿病がある50代の男性で400件近く断られて搬送先が見つからないと。現場の救急隊からの依頼があって、わたしたちが到着したのは、お昼前だったんですけど、その前日の13時ごろから救急隊が搬送先を見つけて探し始めたんですが、見つからず、酸素6リットルで何とか、酸素飽和度が保たれているという状況でした。ですが、少しの会話をするだけで80%台になるという状況でして、昨年私が大学病院で感染症専門医として働いていた時の経験では、今すぐに集中治療室に入れて人工呼吸器を検討するレベルの方が24時間近く自宅で苦しんでたっていう現状でした。在宅医療はもはや最後のセーフティーネットになっています。

●保健所のひっ迫 解消策について

板倉)
続いて、自宅療養者へのフォロー体制についてです。

桝田)
自宅療養者とは保健所がやり取りを行います。その中で医師の派遣が必要と判断されれば保健所が医師会に依頼、医師が自宅療養者のもとに駆けつけるという流れになっています。

板倉)
石川さん、保健所の負荷というのが非常に大きくなってくるかなと思いますが、どうご覧なってますか。

石川医師)
はいその通りです。実は、患者さんは最初から重症になるわけではないですね。必ず最初は軽症からスタートします。患者数が少なくてベッドに余裕があり、保健所が患者さん全員を細やかにフォローできていたころはまだよかっですけども、最近はそれが難しくなってきています。この感染症は医療資源であったり流行状況といった地域特性があります。なので、一律でどうこう対策するというのは難しいと思ってまして、その地域特性にあった方法が重要だと考えております。板橋区では、これから患者さんが発生した時点で、保健所から連絡をもらい私たちのような在宅診療所が24時間体制でフォローする体制を整えて、悪くなってから介入する、病院を探すのではなくて、悪くなり始めをとらえて、その段階から介入する、そういった取り組みを今後新しく始めて行こうと思っております。

板倉)
石川さん、感染を抑えるには自宅療養者の厳しい現状を1人でも多くの人が知って、危機感を共有する必要がありますね。

石川医師)
私は当事者意識がキーワードかと思っております。患者さんは本当に悲惨な状況で療養されています。かと思えば、ドアの1枚向こうには日常が流れています。普通に街を歩いていたりお店を開いていたり。一部の人にとっては「コロナはどこかで大変だな」っていった感覚です。コロナのある世界とコロナのない世界、この世には2つの世界があって、私があっちの世界とこっちの世界を行ったり来たりしてるような感覚に襲われます。今現場は本当に災害レベルです。新型コロナは分断のウイルスとよく言われますが、立場の違いや価値観の違いからさまざまな軋轢を生んで批判ばかりしている現状だと思っております。今こそみんなの気持ちを1つにしてこの災害をどう乗り切るのか。当事者意識を持って一人一人が自分にできることをしっかりと考えてほしいと思っております。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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