V3D Asia株式会社(以下、V3D Asia)は、2026年5月より島根県雲南市において、建設用3Dプリンティング技術の実証実験(PoC)を開始する。施工パートナーには地域密着型の建設会社である株式会社中澤建設(以下、中澤建設)が参画し、日本国内における実運用環境での検証が進められる。本取り組みは、同社が東南アジアで展開してきた建設3Dプリンティング技術を、日本市場に適用する初の試みである。
日本国内初、実施工条件下での運用検証
本プロジェクトは「3Dプリンター島根PoC事業」として実施される。期間は2026年5月15日から5月31日まで。実証フィールドは島根県雲南市掛合町に設けられ、自社開発のガントリー式3D建築プリンターを用いて小規模構造物の施工検証を行う。これまで海外で実績を積んできた技術を、日本の気候・規制・施工条件に適合させるための基礎データ取得が主な目的である。
ガントリー式プリンターと国産材料での検証
本実証では、アルミトラス構造を採用したガントリー式3D建築プリンターを使用する。高い安定性と施工精度を確保しつつ、実際の建設現場に近い条件での運用を想定している。また、日本国内で調達可能な生コンクリートやモルタルを使用し、材料特性や施工性の検証も行う。これにより、国内サプライチェーンへの適合性を見極める狙いがある。
地方建設会社との連携モデルを構築
施工パートナーの中澤建設は、1965年創業の総合建設会社であり、島根県雲南市を拠点に土木・建築分野で実績を重ねてきた。本プロジェクトでは、基礎工事や仮設工事、付帯設備工事を担当するとともに、日本の現場における3Dプリンティング技術の実用性検証に協力する。同社専務の中澤太輔氏は、3Dプリンティング技術について「職人の負担軽減と技能活用の両立を可能にする技術である」と述べ、地域の施工ノウハウと新技術の融合に期待を示している。
背景にある建設業の人手不足
日本の建設業界では、高齢化と若年層の不足が進行している。55歳以上の就業者が約3割を占める一方、29歳以下は約1割にとどまる。特に地方ではこの傾向が顕著であり、省人化や施工効率の向上を実現する技術導入が急務となっている。今回の実証は、こうした課題に対する具体的な対応策の一つと位置付けられる。
海外実績をベースに国内展開へ
V3D Asiaはこれまで、インドネシアやブルネイにおいて住宅や公共施設の3Dプリンティング建設を手掛けてきた。今後は、本実証で得られる施工データをもとに、日本国内での事業化を進める方針である。住宅や公共施設への展開を視野に入れ、建設会社や自治体、研究機関との連携を拡大していく。また海外では、マレーシア・クアラルンプール近郊での高級住宅開発や、インドネシア・バタム島での大規模住宅プロジェクトも進行しており、アジア太平洋地域での展開も強化している。
現地見学会を開催予定
実証実験の施工現場では、2026年5月25日から27日にかけて見学会が開催される。場所は島根県雲南市の実証現場で、企業向けに公開される予定だ。参加希望者はV3D Asiaへの事前連絡が必要であり、天候や進捗状況により日程が変更される可能性がある。
編集部コメント
建設3Dプリンターの話題はこれまで海外事例が中心であったが、日本国内での実施工条件下の検証が本格化する点は注目に値する。特に今回の取り組みは、単なる技術デモではなく、地方の施工会社と連携した実証である点が重要だ。現場で使える形に落とし込めるかどうかは、このような協働モデルにかかっている。材料の国産対応やサプライチェーンの検証も含め、日本仕様への適応がどこまで進むかが今後の事業化の鍵となる。
用語解説
■ ガントリー式3D建築プリンター
門型(ガントリー)構造を採用した大型3Dプリンター。レール上を移動するフレームにより、広範囲かつ高精度な造形が可能で、建設分野ではコンクリートなどを積層して構造物を形成する用途に用いられる。■ PoC(Proof of Concept)
概念実証のこと。新しい技術やアイデアが実際の環境で機能するかどうかを検証するプロセスを指す。事業化前の重要な検証段階として用いられる。建設業界の関連記事
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