スマートフォンを傾け、光の加減で色を変えるアートワークを眺める。フィンセント・ファン・ゴッホの「星月夜」に着想を得たという鮮やかなエレクトリックブルーと黄金色のうねり。その大胆なデザインに胸が躍った。私が見つめていたのは画面ではなく、スマートフォンの背面パネルだ。スマホケースではない。

 「nubia Z80 Ultra」という名を聞いたことがある人は、おそらくほとんどいないだろう。このハイスペックなAndroidスマートフォンは、中国企業の中興通訊(ZTE)が展開するデバイスで、市場の他のどの製品とも似ていない独特の外観を備えている。

 私は3月にバルセロナで開催されたMobile World Congress(MWC)で、この端末を実際に手にする機会を得た。これは、久しぶりにスマートフォンの新しいデザインの波にワクワクさせてくれた、数多くの端末の1つにすぎない。

 こうしたスマートフォンを見つけるには、市場を支配する2大ブランド、Appleとサムスン以外の企業に目を向ける必要がある。長い間、小規模なメーカーは両社と競合するために、より手頃な価格で製品を模倣しようとしてきた。そして、同じ無難な方式に従ってきた。どれもこれも、ブラック、シルバー、ホワイトのプラスチックや金属でできた、均一にスリムな板状の筐体ばかりだった。退屈、退屈、実に退屈だ。見るのも退屈なら、レビューするのはもっと退屈だった。

 確かに、メーカーも時にはブルーやグリーン、ピンクといった遊び心のある色使いを試みることもあったが、そうしたおとなしい実験も結局は安全圏を出ないものだった。また、残念ながら、Googleの「Project Ara」やモトローラの「Moto Z」のようなモジュール式のコンセプトスマホは、本格的に普及する前に姿を消してしまった。

 長年にわたり、数え切れないほどの退屈なスマートフォンを扱ってきた私にとって嬉しいことに、そうした日々はようやく終わろうとしているようだ。

 1つには、折りたたみ革命によって、ブック型の折りたたみスマホや、現代的に再解釈された縦折りスマホが登場したことが挙げられる。Appleが初代「iPhone」で確立したテンプレートを超えて、スマートフォンに何ができるのか、どうあるべきか、どのような姿をしていればいいのかを、企業が初めて問い直したように感じられる。

 最近、大手から新興企業までさまざまなブランドから新しいスマートフォンが次々と発表された。今こそ、現在のデザインを取り巻く状況を立ち止まって整理するのに絶好のタイミングだ。

スマートフォンデザイン:現状の勢力図

 まずは大手メーカーから見ていこう。Appleは3月の第1週に「iPhone 17e」を発表した。ブラック、ホワイト、そして極めて淡いピンクが用意されているが、同社が約20年間使い続けてきた板状のテンプレートを踏襲している。

 2月末、サムスンは旗艦ラインアップを「Galaxy S26」シリーズへと刷新したが、その外観は2025年のモデルとほとんど区別がつかない。さらに3月、同社は「Galaxy Z TriFold」の販売を終了すると発表した。これは3つのパネルが展開してタブレットのような画面になる、同社にとって過去10年余りで最も野心的なデザインだった(「Galaxy Z Flip」と「Galaxy Z Fold」は引き続き販売される)。

 一方、中小ブランドが競い合うMWCでは、話は全く別だった。TECNOのモジュール式デザインや、ZTEが展開する「nubia」ブランドの多数のラインアップは、星月夜モデルのZ80 Ultraからゲーミングスマホの「Neo 5」に至るまで、どれも強烈な印象を残した。

 私は、深紅の荣耀(HONOR)製「Magic V6」の職人技と、触り心地のよいヴィーガンレザーに魅了された。同僚のPatrick Holland記者は、Motorolaの「razr fold」の豪華でシルクのような手触りが、最大のセールスポイントになるかもしれないと指摘している。振り返ってみれば、Motorolaは長年にわたり布地や木材などの素材を試しており、面白いスマートフォンデザインにおける一種の先駆者であったと言える。

 MWCの期間中、私が見た中で最大の群衆が集まっていたのは、最新の「Robot Phone」が動く様子を披露していたHONORのブースだった。ポップアップするジンバル付きカメラを搭載したRobot Phoneは、ロボット工学とモバイルを融合させたものだ。本質的に、われわれが知るスマートフォンの再発明と言える。

 「何十年もの間、スマートフォンのフォームファクタは不変だった。テクノロジーが進化するにつれ、新種のデバイスが必要になる」と、HONORのRobot PhoneエキスパートであるThomas Bai氏は語った。

 この端末は未発売で、どれほど普及するかは不透明だ。しかし、少なくとも同社が大胆でユニークなスマートフォンのデザインを構想し、実行に移す意欲があることを示している。

小規模メーカーによる大胆な挑戦を歓迎しよう

 大手の主要企業がデザインのリスクを冒しにくい一方で、より小規模な企業は似たような製品があふれる中で差別化を図ろうと奮闘し、大胆な勝負に出ている。それは、かつて市場のリーダーであったNokiaやソニーが、スライド式、回転式、膨らみのある形状や奇妙なキーボード配置など、あらゆる種類の風変わりな端末を発売していた、実験的スマートフォンデザインの全盛期が再来したような感覚だ。

 デザインで差別化することを、英国のスタートアップ企業Nothingほど理解しているメーカーはないだろう。同社は、現在主流のミニマリズムから距離を置き、懐かしい「Y2K」の美学を色濃く取り入れている。透明なケースで製品の構造をあえて露出させ、遊び心のあるライティングやドット絵のようなインターフェースを提供している。

 かつてファッションブランドのLoewe(ロエベ)に在籍していたNothingの最高ブランド責任者(CBO)であるCharlie Smith氏は、楽しさと「反抗的な創造性」の文化こそが、同社のデザイン哲学の本質だと説明する。それがあるからこそ、成熟し確立された市場への後発参入者でありながら、Nothingは大きな話題を呼ぶことができたのだ。

 それは未来的であると同時に、退屈なスマートフォンが普及する前の時代を思い起こさせるノスタルジックなものでもある。「かつてあった個性が、すべて吸い取られてしまったかのようだ」と、Smith氏は「Nothing Phone (4a)」の発表を前に私に語った。

 同社はカラーの採用にも積極的になり始めている。「テクノロジーを楽しいものにしたいなら、グレーやブラック、ホワイトだけでは実現できない」とSmith氏は述べた。

 Nothingのデバイスは、Appleのデザインアプローチに最も顕著に現れている「クワイエット・ラグジュアリー(控えめな贅沢)」とは対極にあるように感じられる。Appleの場合、それは優雅でスリムなエッジを持つデバイスや、完璧な曲線を描き壁に溶け込むような大理石の手すりを備えたApple Storeそのものに表現されている。

 たとえAppleがiPhoneに色を取り入れたとしても(2025年秋のオレンジ色のモデルを思い出してほしい)、大胆な色の選択がユニークなデザインの実験と結びついた時ほどのインパクトはない。長年、Appleはスマートフォンのデザインについて揺るぎない姿勢を保っており、公平に見れば、それは世界中のiPhoneユーザーを満足させ続ける、収益性の高い(そして予測可能な)戦略だった。もしAppleが予想通り今後1年以内に折りたたみiPhoneを投入したとしても、勇気を称賛されるべきではないだろう。

 スマートフォンの形状がどこまで進化できるか、その限界を押し広げているのは主にHONOR、OPPO、ファーウェイといった中国のスマートフォンメーカーだ。これらの企業がサムスンやMotorolaと共に過去5年間に折りたたみ分野で達成したすべての成果は、Appleが緻密に計算されたリスクを取るための土台を築いたことになる。

 もしそのリスクが報われれば、すでに大胆な動きを見せているメーカーへの評価につながる。そして願わくば、退屈ではなくなり楽しさが増大した、スマートフォンの新時代の幕開けとなってほしい。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。

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