
地元開催となったハンドボールの全国高校選抜大会。大分雄城台のエースとしてコートに立った合沢蒼風(新2年)は、初戦の花巻北(岩手)戦で両チーム最多の9得点を記録し、勝利に貢献した。だが、試合内容は決してうまくいっていたわけではなかった。「前半は『自分がやってやる』という気持ちが強すぎて、空回りしてしまった」。試合後、そう振り返った言葉に、若きエースの葛藤がにじむ。
バックコートプレーヤーとして1対1の突破力、ロングシュート、そしてポストとの連係と多彩な得点パターンを持つ。時には司令塔として味方を動かし、自ら仕留める。その万能性は世代屈指と評され、中学時代から日本代表にも名を連ねてきた。だが、この日は違った。立ち上がりのシュート3本を外し、リズムを失った。
全国選抜では確かな足跡を残した合沢
それでも崩れなかったのは、修正する力を持っているからだ。1本の成功が流れを変えた。「1本入ってから勢いに乗れた」。余計な力が抜け、「自分が決める」というシンプルな思考に切り替わる。そこからの連続得点は、能力の高さだけでなく、自己修正能力の証明でもあった。
ハーフタイムにはチームとしての整理も進んだ。速すぎた攻撃を見直し、時間を使って相手を動かす。クロスプレーを増やし、止まっていた足を再び動かす。さらに相手の高い守備の裏を突き、スペースを使った攻撃へとシフトした。個の力に頼るだけでなく、状況を読み、最適解を導く冷静さ。それもまた合沢の武器である。
ただし、本人の評価は厳しい。「シュート確率が良くなかった。もっと決められた」。9得点という数字にも満足はない。目線は常にその先にある。
背景には、ひとつの時間制限がある。昨年12月、右手を負傷し手術。全治3カ月の大けがだった。まだ痛みは残る。それでもコートに立つ理由は明確だ。「先生と一緒に戦える最後の大会だから、優勝したい」。今大会をもって指揮を執った平井徳尚監督は退任。その時間の重みが、合沢を前へと押し出したのだ。
将来は日本代表での活躍を目指す
2回戦では優勝した浦和学院に敗れた。それでも5得点を挙げ、全国の舞台に確かな足跡を刻んだ。試合後、平井監督はこう評した。「ポテンシャルからすればまだ半分。もっとできた」。期待の裏返しであり、伸びしろの証明でもある。
次なる大会は夏の全国高校総体。合沢は「1試合13得点」を一つの基準に掲げる。全国で感じたフィジカルの差、守備の圧力。その中でも「かわしながら、確率を上げる」と言い切る姿に迷いはない。エースとは、結果だけでなく責任を背負う存在であることを、この大会を通して体現してみせた。
空回りと覚醒。その両方を経験した今大会は、合沢にとって通過点にすぎない。未完成であることを自覚しながら、それでも前へ進む。合沢の成長物語は、まだ序章に過ぎない。
(柚野真也)

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