土田陽介のユーラシアモニター

【土田陽介のユーラシアモニター】ダブついているロシア産ガスの輸入をEUが再開すれば世界のガス需給は緩和

土田 陽介

土田 陽介
三菱UFJリサーチ&コンサルティング・主任研究員

follow
著者フォロー

フォロー中

2026.3.31(火)

EUはロシア産天然ガスの完全禁輸措置の発動に合意している(写真:AP/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

 残念ながら、イラン情勢に収束の兆しが見られない。化石燃料の需給もグローバルにタイト化し、価格が高騰している。日本の場合はガソリンや灯油といった石油もさることながら、天然ガスの価格の高騰が社会に与える影響が極めて大きい。東日本大震災を受けて原発の稼働を停止し、ガス火力発電への依存を強めたためである。

 2022年に生じたロシア発のエネルギーショックの際もガス価格は高騰している(図表1)。東アジアの指標であるプラッツJKM(日本・韓国向けLNG=液化天然ガススポット指標)の先物価格は、ロシアのウクライナ侵攻の直前より1mmBtu当たり25ドルと強含んでいたが、2022年8月には70ドルまで価格が急騰する事態となった。

【図表1 日本のガス代と東アジアのガス先物価格】(出所)総務省統計局、シカゴマーカンタイル取引所(CME)

ギャラリーページへ

 ただ、今回のイラン発のエネルギーショックは、ロシア発のエネルギーショックよりも深刻となろう。

 ガスに限定して言えば、ロシア発のショックの時はグローバルなガスの生産が減少したわけではなく、ロシア産ガスの需要家が大きく変わった。具体的には、ヨーロッパがロシア産ガスの消費を減らす一方、非ロシア産ガスの消費を増やしたため、非ロシア産ガスの価格が上振れした。

 行き場を失ったロシア産ガスについては非ヨーロッパ、特にアジアが消費を増やしたが、ヨーロッパによる消費を完全に代替するには至らなかった。最大の需要家となった中国との間にはパイプライン(シベリアの力)が一本しかないうえに、他の需要家とはタンカーによるLNG輸送しか手段がなく、輸送能力に限界があったからだ。

 そのため、ロシアではガスがダブついているが、ロシア産ガスの供給が市場に出てこない分、グローバルのガス需給はロシアがウクライナに侵攻する前よりは引き締まっている。結果、ガス価格は高止まりしているが、今回のイラン発のエネルギーショックではカタールのガス精製施設が破壊されたため、ガスの生産そのものが減少する。

 仮にイラン情勢が収束したところで、カタールの精製施設の復旧には長期を要するため、ガスの生産はすぐに回復しない。ゆえに、グローバルにガスの需給は引き締まった状況が長く続くと懸念される。

 こうした事態にさらに拍車をかけかねないのが、4月25日に予定されている、欧州連合(EU)によるロシア産LNGの禁輸措置の発効だ。

WACOCA: People, Life, Style.