
3月22日、テヘランで、イスラム革命指導者のホメイニ師と前最高指導者のハメネイ師が描かれた壁画の横を歩く女性。Majid Asgaripour/WANA (West Asia News Agency) via REUTERS
[30日 ロイター] – イラン指導部は米・イスラエルとの戦闘開始から1カ月が経過した中で、国内の不穏な動きを未然に封じ込める取り組みを進めている。その手段は逮捕、死刑執行、治安部隊や政府支持者による大規模な街頭展開などで、検問所の要員に子どもまで動員される状況だ。
抗議活動を禁止する厳しい警告にイランの人々が公然と反抗する兆しは今のところ乏しい。ただ当局は、既に疲弊している経済がさらに打撃を受け、紛争終結後に現体制への反対運動が加速することを恐れている。
イラン国内の住民や国外の人権団体からは、強硬派の革命防衛隊が勢力を強め続ける構図から、流血を伴う国内の衝突が起きる条件が整いつつあるのではないかと懸念する声が聞かれる。
<騒乱へのおびえ>
トランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は開戦当初、イランの体制転換は可能だと希望的な観測を示していた。
しかし1カ月にわたる猛烈な空爆に見舞われても、イラン指導部はホルムズ海峡を事実上封鎖するとともに、ペルシャ湾岸諸国のエネルギー施設を攻撃し、世界的な石油・ガスの供給ショックを起こすことで、自分たちは生き残れると自信を持っているように見える。
皮肉なことにイラン指導部にとって最大の危機は、停戦と同時に訪れるかもしれない。イラン国民が壊滅した自国経済を目の当たりにして、前途の暗さに思い至るからだ。
そうした国内の引き締めを図る動きの最前線に立つのは、革命防衛隊傘下の民兵組織バシジで、この組織は主要都市の内部や入口に検問所を設置。検問所の一部はイスラエルによる攻撃を受けたが、全体としてなお健在とされる。
ただバシジは人手不足に陥っている兆候もある。革命防衛隊の高官は先週国営テレビで、検問所やパトロールの志願要員の最低年齢を12歳に引き下げたと発表した。
一方イラン国内で接触したある関係者の話では、当局は戦時中の物資供給継続に注力しているものの、戦後に起きる事態への不安感を強めているという。
別の関係者は、将来の社会的騒乱に対する懸念が、現在締め付けを行っている一番の理由だと指摘。3人目の関係者は、イランで長期の休暇期間が終わって企業活動が再開された今、経済的な重圧がより鮮明になるのではないかとの見方を示した。
セント・アンドルーズ大学のアリ・アンサリ教授(現代史)は「イラン現体制は戦争前から既に深刻な苦境に陥っていたが、現在は一層大きな打撃を受けている。以前から直面していた政治的・経済的危機は今後さらに悪化する一方だろう」と述べた。
その上で「平和が訪れた際に、かつてのあらゆる問題はより重大な形で再燃する。指導部は疑心暗鬼になり、傷付き、恨みを募らせており、あらゆる火種を発生前に抑え込もうとするだろうが、かえって多くの国民を離反させかねない」と付け加えた。
イランでは当局が開戦以来、経済的影響の全体像を把握できる信頼に足るデータを公表せず、インターネットは頻繁に遮断されている。
ただ収入源として不可欠なエネルギー施設を含むインフラには広範な被害が生じ、制裁が緩和される見込みもほとんど立っていない。その一方で近隣諸国への攻撃により、経済的パートナーとの関係は悪化した。
先のイラン国内の関係者は、こうした状況から経済活動の維持は極めて困難になり、社会不安が再燃する可能性があると明かした。
<当局側の脅し>
今年1月、イラン指導部を構成する聖職者と革命防衛隊は、経済悪化への怒りに端を発した全国規模の反政府デモを鎮圧し、数千人を殺害した。
米・イスラエルとの開戦以降に確認された唯一の公然とした反体制的な兆しは、最高指導者だったハメネイの師死亡が発表された際に首都テヘランで歓声が聞こえたことだが、それ以後治安機関は厳しい弾圧に乗り出している。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのルイス・シャルボノー氏は「イラン当局は実在する、または疑わしいとみなす反体制派、バハイ教徒を含む民族・宗教少数派、攻撃の報告や映像を共有する人々に対する逮捕を続けている」と述べた。
イラン国内の3人の人権活動家は、特にクルド人、アラブ人、バルーチ人ら少数派が多い地域で締め付けが強まっていると話す。これらの地域は以前から不穏な動きが集中していた。
治安部隊は扇動の疑いがある人物の親に対して、その子に投獄や処刑の可能性があること、また親族も罰せられる恐れがあることを警告しているという。
30日にはイラン検察当局が、国外に居住するイラン人であっても、米国やイスラエルへの支持を表明すれば資産が没収される可能性があると通告した。
一方、当局は政府支持派のデモや、空爆で死亡した当局者を追悼する式典のために連夜のように人員を投入して街頭を埋め尽くしている。
イラン人権センターのハディ・ガミエ代表は「公共の場を占拠し、抗議活動を行う恐れがある人々にその場所を使わせないようにするというのが明らかな目的だ」と説明した。
さらにガミエ氏は「当局に動員された人々は住宅街さえ標的にして、車両で巡回しながら体制支持のスローガンを連呼したり、空に向かって銃を発砲したりして、自宅にいる住民を威嚇している」と述べた。
あるテヘラン市民は、人々は夜間には外出できないほどの恐怖心を持っており、指導部がこの戦争を生き延びた場合、より血なまぐさい弾圧が待っているのではないかとの不安を吐露した。
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