有事でプラスに転じたビットコインETFへの資金流入、その背景と展望

松嶋 真倫

松嶋 真倫
マネックス証券 暗号資産アナリスト

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2026.3.19(木)

イラン攻撃を機に一時期の暴落から抜け出しつつあるビットコイン。その背景と今後の行方は(写真:©Aloisio Mauricio/Fotoarena via ZUMA Press/共同通信イメージズ)

 イランを巡る地政学リスクの緊迫化が連日報じられ、伝統的金融資産が軒並み下落する中、ある資産が異彩を放っている。それがビットコインである。「ハイリスクな投資対象」というイメージがいまだ根強いビットコインが、なぜこの緊迫した状況下で回復傾向を見せているのか。本稿では、イラン情勢悪化後の金融市場の動向を振り返りながら、戦時下においてビットコインの真の価値がどのように見直されつつあるのかを紐解いていく。

(松嶋 真倫:マネックス証券 暗号資産アナリスト)

イラン情勢悪化後のビットコインの注目すべき値動き

 米国とイスラエルがイランへの大規模な軍事攻撃を始めて以降、金融市場では主要資産が大きく変動している。

Bloomberg:2026/2/27から3/16までのBTC(橙)、金(黄)、日経平均株価(赤)の値動き

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 まず、株式市場は総じて下落基調を強めている。中東地域での戦闘激化は、世界のエネルギー供給網に対する不安を増大させ、原油価格の高騰を招いた。原油高はインフレの再燃に直結するため、投資家は運用リスクを回避する「リスクオフ」の姿勢を鮮明にしている。

 さらに、地政学リスクの高まりは製造コストの増大やサプライチェーンの分断懸念を生み、これまで市場を牽引してきたAI・半導体関連銘柄への悪影響が意識され、ハイテク株を中心に売り圧力が強まった。

 一方、有事の際の安全資産とされる金(ゴールド)は、複雑な値動きを見せた。

 軍事衝突の勃発直後から3月初旬にかけては、セオリー通りに資金が逃避し一時的な上昇を見せた。しかし、その後は一転して軟調な推移となっている。

 この背景には、インフレ高止まりによる米国の利下げ観測の後退がある。

 金利がつかない金は、高金利環境下では相対的に投資魅力が低下しやすい。加えて、前述した株式市場の急落を受け、投資家が損失補填のために換金性の高い金を売却し、手元資金を確保する動きが重なったとみられる。

 これら伝統的金融資産が苦戦する中、異なる軌跡を描いているのがビットコインである。事態が急激に緊迫化した直後こそ、リスク資産として短期的な下落を見せたが、足元にかけては下落トレンドが続く株式や金に反して、明確な回復傾向を示している。

 この回復の要因には、米国における暗号資産の規制整備に対する期待感もさることながら、次章で詳述する「戦時下におけるビットコイン特有の需要」が大きく影響している可能性が高い。

 実際、米国市場におけるビットコインETFへの資金流入は、中東情勢の悪化にもかかわらずプラスに転じている。この動向は、投資家がこれまで上昇続きだった株式や金の利益確定を急ぐとともに、新たな逃避先・分散投資先として資金の一部をビットコインへシフトさせていることを示唆している。

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