
写真は2015年6月、独フランクフルト証券取引所で撮影。REUTERS/Ralph Orlowski
[ロンドン 13日 ロイター] – 米国とイスラエルによるイラン攻撃がインフレの拡大を引き起こす可能性に揺れる世界市場は、今後の展開の手掛かりを得るために2022年のロシアによるウクライナ侵攻の際の対応を振り返っている。
当時は世界経済が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)から回復しつつある中、エネルギー価格高騰がインフレを加速させ、株価は下落し、投資家は比較的安全な資産と見なしてドルを買い求めた。
資産運用会社フォーヴィスマザーのチーフエコノミスト、ジョージ・ラガリアス氏は「貿易戦争によって今は世界経済が軟調だという点で、いくつかの類似点がある」とし、「インフレ要因の根底には貿易戦争があり、それが原油価格の上昇によってさらに悪化する可能性がある」と指摘する。
<原油価格の衝撃波>
中東での戦闘に対する市場の反応には、ウクライナ侵攻後の当初段階との類似点がいくつか見られる。
エネルギー市場の変動は、ロシアによるウクライナ侵攻後に見られた混乱に匹敵する。北海ブレント原油の先物価格は米国とイスラエルによるイラン空爆開始後に約40%と急騰し、9日には1バレル=120ドルに迫った。
2022年にはブレント先物が2週間で約15%上昇し、2008年以来の高値を記録した。
ウィリアム・ブレアのマクロ市場アナリスト、リシャール・ド・シャザル氏は「石油市場は、新型コロナのパンデミックが起こる前の10―20年間は供給面で実質的に摩擦のない世界だったが、現在では供給ショックが次々と襲いかかる世界へと変化した」と語る。
A chart showing that oil market swings following Middle East war rival turmoil seen after Ukraine invasion
米ドルもイラン攻撃後に2.6%上昇しており、これは22年の同じ期間での上昇幅と同程度だ。
<安全資産の変動>
しかし、他の資産の動きは全く異なっている。
欧州のガス卸売価格は約58%上昇と、2022年のロシアによるウクライナ侵攻後に4倍弱まで跳ね上がったのに比べると比較的緩やかな反応にとどまった。これはロシアが主要なガス供給国であるという事情を反映している。
比較的安全とされる資産の中では、ドイツの10年物国債利回りがイラン攻撃後に30ベーシスポイント(bp)上昇したのに対し、22年は10bp超も低下していた。
今回は、市場がインフレ上昇をより迅速に織り込んでいる。22年には価格上昇圧力が明確になるのに伴い、当初下落していた金利が急上昇した。
今回はそうした懸念が比較的和らいでいるようだ。22年に急騰したユーロ圏消費者の5年先期待インフレ率は2.18%前後と、欧州中央銀行(ECB)目標の2%に近い水準で推移している。
しかし、インフレの根底にある要因は22年と似ている。当時は新型コロナ禍後の物価上昇圧力が世界での積極的な利上げを余儀なくさせた。フォーヴィスマザーのラガリアス氏は、短期的に同様の動きが起こる可能性は低いとして「(中央銀行は)コアインフレ率が2―3カ月間にわたって実質的なインフレ圧力にさらされていることを確認する必要があるだろう」と言及。その上で「そのような事態が起こる可能性は低く、仮に起きたとしてもイランが原因にはならないだろう」との見方を示した。
Line chart showing market-based measures of long-term inflation expectations in the euro zone and U.S.
一方、ロシアのウクライナ侵攻直後に8%近くも急騰した金は、イラン侵攻後には約3%下落している。
RBCのストラテジスト、クリストファー・ルーニー氏は、イラン攻撃とエネルギー市場との間に明確な関連性があることから「汎用的なヘッジ手段の喫緊の必要性」は低いと指摘し、これが債券利回りやドルの上昇と相まって金価格の下落要因となっていると話した。
Gold prices fell after the Iran war began, but rose after the Russia-Ukraine war broke out.
<欧州株の動きは過去を再現>
22年のウクライナ侵攻直後に欧州株は急落し、当初2週間に約10%下落した。今回は5%の下落にとどまっている。
22年には欧州は地理的にも、またロシアへのエネルギー依存という面でも、嵐の目の中にあった。中東は地理的に離れているものの、エネルギー輸入への依存度の高さから、欧州は依然として弱い立場にある。
バークレイズの株式ストラテジストらは、原油価格が1バレル=100ドル近辺で高止まりした場合、STOXX欧州600種指数は550付近まで下落する可能性があると指摘した。これはイラン攻撃直前の今年2月27日の終値から約13%下落した水準だ。
一つの違いは、イラン攻撃前の欧州市場の状況にある。資産の米国からの分散投資や、欧州の景気刺激策によって株価が過去最高水準だったものの、ウクライナ侵攻前にはロシアの動きが予想されていたため株式市場は既に下落していた。
Line chart compairing performance of STOXX 600 current day versus 2022
<エネルギー市場の不穏な動き>
シカゴ・オプション取引所(CBOE)の原油価格のボラティリティー指数(.OVX), opens new tabは120%と、5年ぶりの高水準に達した。これは2022年のウクライナ侵攻後に付けたピークの102%を上回る。しかしながらエネルギー分野を除くと、ボラティリティーは一般的に危機的状況と見なされる水準には程遠い。投資家の不安心理を示す「恐怖指数」として知られる株価のVIX指数(ボラティリティー・インデックス)(.VIX), opens new tabは約25とやや高めではあるものの、25年4月に付けた60や、新型コロナ禍での80を下回っている。
22年2月には38まで上昇したが、その後は下落した。
米国債の先行き変動リスクを示す「ICE BofA MOVE指数」(.MOVE), opens new tabは95と、25年6月以来の高水準まで上昇。ただ、22年3月上旬に付けた最高値140を下回っている。為替のボラティリティーはほとんど変化していない。
An orange line chart of the CBOE index of oil market volatility from 2020 to today.
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab


WACOCA: People, Life, Style.