アングル:配当取り物色、今年の新基準は「利回り3%」 強まる選別

2020年10月1日、東京証券取引所前で撮影。REUTERS/Issei Kato

[東京 27日 ロイター] – 日本株市場では3月決算企業の配当取りシーズンが到来している。2%台の長期金利、6万円目前の日経平均株価という金融環境の中で、今年のキーワードは「3%の配当利回り」だ。株主優待や成長性との「合わせ技」を重視する動きも広がりそうだ。

例年、3月期決算企業の配当狙いの物色は2月中旬から3月の権利最終日にかけてピークを迎える。東証のデータによると、プライム市場の約69%が3月期決算を採用している。

長期金利が前年の同時期の1%台前半から2%台に上昇した一方、東証プライム市場の単純平均の配当利回りは2.53%と、2025年2月末の3.00%から低下している。増配の取り組みは浸透してきている一方、株価が上昇していることが利回り低下の主因だ。

日銀による利上げ継続が見込まれる中、SMBC信託銀行の山口真弘投資調査部長は、金利上昇によって高配当株の魅力が低下しつつあるとの見方を示す。大和証券の細井秀司シニアストラテジストは、選別基準が変化するとみており「これまでは利回り2.5%以上で高配当銘柄と位置付けられていたが、金利上昇を受け、今では3%程度ないと妙味が薄くなってしまう」と話す。

3月期決算のプライム銘柄のうち、これまで目線とされた配当利回り2.5%以上の銘柄は昨年2月末時点で40%だった。それが、足元で3%以上に引き上げると、対象銘柄は21%に減少する。高配当利回りの物色対象はそれだけ狭まっている。

大和証券の細井氏は、累進配当の方針を示している企業が理想的で、少なくとも減配がなく、来期の増配が市場で見込まれるような銘柄が有望とする一方、有価証券売却などの特別利益で純利益が膨らんだことで増配しているような銘柄には注意が必要だと話している。

<銀行は高配当の魅力低下>

とりわけ銀行株は、高配当株としての相対的な魅力低下が意識されそうだ。足元の銀行株の平均配当利回りは約2.3%で、昨年2月末の3.2%から低下している。増配に積極的に取り組んできた銀行は目立つものの、配当利回りの面では株高が増配を打ち消す格好となっている。

TOPIX業種別株価指数の銀行(.IBNKS.T), opens new tabは、国内金利の上昇の業績寄与を織り込みながら、24年に46%、25年に40%と、それぞれ上昇。今年に入ってからも年初からの上昇率は20%と、TOPIXの13%より高いパフォーマンスを示している。例えば三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T), opens new tabは26年3月期の年間配当予想を1株当たり10円増配の74円としている一方、株価は4月以降50%上昇。配当利回りは25年3月末の2.98%から、足元では2.60%に低下している。

アイザワ証券の坂瀬勝義市場情報部長は、ドル高/円安の進行や金利上昇の地合いの中、銀行株はこれからも買われやすいとしながら「高配当銘柄という部類からは外れるだろう」と話す。

銀行株のほかにも、三菱商事(8058.T), opens new tab、三井物産(8031.T), opens new tabなど商社株も同様の傾向が意識されている。日本郵船(9101.T), opens new tab、商船三井(9104.T), opens new tabなどの海運株は3─4%の利回りを維持しているものの、昨年の5%台からは低下した。これまで高配当とみなされてきた銘柄は、株価上昇に伴い総じて利回りが低下している。

<株主優待との合わせ技も重要に>

配当取り相場そのものは、今年も活発と見込まれている。SMBC信託銀行の山口氏は、配当や株主優待は企業経営の健全性を図る上で重要なバロメーターになると指摘し「高配当株や優待株の物色はまだまだ有効な投資戦略で、この物差しが無効になることはない」とも話す。

松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「日経平均が歴史的な水準となり、新しく株式投資を始める個人投資家が増える中、配当はわかりやすい指標。3月相場入りとなり、配当に着目した買いはこれからも増えるだろう」という。

高配当株と優待株との合わせ技が有効との見方もある。例えば、八十二長野銀行(8359.T), opens new tab、大分銀行(8392.T), opens new tabは今年1月に株主優待制度の導入を発表した。配当利回りはメガバンク株と同様に低下傾向にあるものの、保有株数や年数などの条件を満たせば、QUOカードや県の特産品のカタログギフトが付与される。配当金と株主優待の価値を合算した総合利回りでみる個人投資家は少なくない。

「株主優待の新設や拡充は、株主を増やす目的だけでなく、業績への自信の表れの場合もある」とSBI証券の土居雅紹執行役員は指摘する。

配当から得るインカムゲインに加え、株価上昇によるキャピタルゲインを期待する戦略も有望視されている。SBI証券の土居氏は、高配当や優待に加え、連続増収・増益の実績があれば「外部環境が急速に悪化した局面でも安心して保有できる」と話す。松井の窪田氏は「インカムゲインを期待して高配当銘柄として買ったところ、思いのほか株価が人工知能(AI)期待で上昇し、結果的にキャピタルゲインを得た事例は少なくない」と語る。

日立建機(6305.T), opens new tabやコマツ(6301.T), opens new tabは、高配当株の一角として物色されてきた面がある一方、フィジカルAIやデータセンター関連などの思惑もあって年初から約50%上昇した。

株高となってもなお配当利回りが長期金利を上回っている銘柄群も少なくなく「インカムもキャピタルも狙う戦略は、新たな物色の潮流になるのではないか」と、松井の窪田氏は話している。

◎TOPIX100(.TOPX100), opens new tab採用銘柄(3月期決算)の予想配当利回りランキング

出所:LSEGデータに基づきロイター作成。

佐古田麻優 編集:平田紀之、橋本浩

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