社説/中国の「対日」圧力 日中対立に距離置く米国に懸念

日中関係の一段の悪化を懸念する。高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁を引き金に、相次いでいた中国の対日圧力は軍民両用(デュアルユース)製品の対日輸出の禁止に至った。日本政府による撤回要求は受け流され、関係悪化の長期化を視野に入れざるを得ない。4月に予定する米中首脳会談も、対中貿易で実利を追うトランプ大統領は日中対立に距離を置く。中国は日米関係にくさびを打ちたい思惑もあり、米国の中国接近の行方も注視する必要がある。

中国商務省は24日、日本の20企業・団体に対し、軍民両用製品の輸出を即日から禁止した。別の20社・団体は監視リストに追加された。レアアース(希土類)を含む重要鉱物も対象とみられ、高市政権が推進するAI(人工知能)・半導体、防衛など戦略17分野の強化に影響を及ぼしかねない。中国はこれまでも日本への渡航自粛、日本産水産物の輸入再開手続き中止などの圧力を加えてきたが、高市政権の政策実現に向けた国会審議が本格化するのを前に、その圧力をさらに強めたように映る。

高市政権は東アジアでの中国の軍事的威圧を念頭に、安全保障政策を抜本強化する。防衛費の増額や非核三原則の扱いも議論の対象となる見通しだ。憲法改正も目指す。保守政策を推進する高市首相が国会答弁で触れた台湾問題は中国には「核心的利益の核心」であり、発言を撤回しない高市首相による局面打開は困難と言わざるを得ない。

高市首相が衆院選を経て安定政権を築き、中国も日本を無視できないとの見方もあったが、事態は真逆だった。中国は対米関係が悪化すると日本に接近するが、対米関係が安定すれば日本を重視しない傾向もある。

その米中関係。トランプ大統領は11月の中間選挙を控え、対中貿易で成果を出したい思惑が透ける。中国産レアアースの安定調達や農産物などの対中輸出の拡大を目指す。だが中国は相互関税の切り札を失った米国の足元を見て、4月の米中首脳会談が中国ペースとなる事態も想定される。米国がどこまで中国に接近するのか注視したい。

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