高知県安芸市本町の
妙山(みょうさん)
寺が、お彼岸の3月20日から一棟貸しの宿を始める。「墓じまい」を考える県外の
檀家(だんか)
から、家も手放したいとの相談を受けたことがきっかけ。「安芸を離れた他の檀家も、お参りしやすくなるように」と買い取り、改修した宿は「
有縁(うえん)
」と名付けた。「ご先祖の地である安芸とのご縁が続きますように」との願いが込められている。(浦一貴)

一棟貸しの「有縁」を開く妙山寺の北住職夫妻。かつては茶道教室を開いていた家で、縁側の庭が美しい(いずれも高知県安芸市で)一棟貸しの「有縁」を開く妙山寺の北住職夫妻。かつては茶道教室を開いていた家で、縁側の庭が美しい(いずれも高知県安芸市で)

 妙山寺は浄土宗西山禅林寺派で、応仁の乱(1467~77年)以降の創建と伝わる。鎌倉期作の木造聖観音立像は重要文化財に指定されている。開業する宿は築55年の木造2階建て。寺に近く、安芸駅からも南に徒歩約5分の場所にある。

 2024年末、関西で暮らす檀家から北善孝住職(43)に相談があった。墓じまいや永代供養の相談から、話題はきょうだいが暮らしていた家へと移った。

一棟貸しの宿として生まれ変わった建物と、植栽が美しい玄関前の庭一棟貸しの宿として生まれ変わった建物と、植栽が美しい玄関前の庭

 「私が安芸に戻って暮らすことはないでしょう」。とはいえ、きょうだいが茶道教室を開いていたこの家には玄関先と縁側に庭がしつらえてあり、愛着がある。空き家になったこの数年間は業者に管理を頼み、檀家自身も年1、2回訪れていた。「ちゃんとした人に売りたいのですが……」

 県外で暮らす他の檀家が法事などで訪れる際、寺は宿の手配を頼まれることがある。「ホテルもいいけれど、自宅のように過ごせる一棟貸しの宿があれば」。妻えりかさん(41)の提案に住職も賛成した。半年後に買い取りを申し出て、昨年7月、改修に取りかかった。

 宗教法人が旅館業を営むため、並行して法務局と県に寺の規則変更を申請。本山の許可を得るにも、総代や寺の役員会の同意が必要だった。「県の手続きは時間がかかり、営業できなかったらどうしようと、悩んだ」。開業が迫った今ではもう笑い話だ。

2階廊下の窓は木枠をそのまま生かしている2階廊下の窓は木枠をそのまま生かしている

 柱や
梁(はり)
、屋根瓦はそのまま活用できた一方で、1、2階に2間ずつあった和室は、各1部屋を板張りに。縁側の大窓や水回りは新調し、浴室を設けた。2階廊下の床は磨き上げ、木枠の窓を残して昭和の懐かしい雰囲気が漂う。1月末に開いた内覧会では、「同窓会で帰省した友人を泊めたい」との声もあったという。

 「法事だけではいずれ寺は運営していけないとの危機感もあった」一方で、北住職は言う。「手を合わせること自体、日常生活から減った時代だからこそ、ご縁を大事にしたい。永代供養に出して終わり、ではさみしいでしょう」

 檀家以外の宿泊も歓迎。2~7人で1泊税込み3万円からを予定している。問い合わせは妙山寺(0887・35・3244)。

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