JCIIフォトサロンでは、2026年3月31日(火)から4月26日(日)まで、前野寛幸作品展「伊勢・志摩 安乗の人形芝居 1971~1984」を開催する。
同展では、前野寛幸氏が1971年から1984年にかけて撮影した、伊勢・志摩地方に伝承される民俗芸能「安乗(あのり)の人形芝居」を記録した作品(すべてモノクロ、60点)を展示する。
前野氏は、1948年三重県に生まれ、東京綜合写真専門学校を卒業後、写真家 杵島隆・大橋勲・田村正衛各氏に師事し、フリーランスの写真家として活躍している。現在まで、歌舞伎役者や地域の伝統芸能を主題に個展・写真集を発表、読売演劇広告賞最優秀賞をはじめ多数受賞し、地域文化と舞台芸術を深く捉える作風で知られている。
三重県志摩市・安乗岬に鎮座する安乗神社では、毎年旧盆の神事行事として、古くから三人遣いの人形芝居が奉納上演されてきた。国の重要無形民俗文化財に指定されているこの芸能は、保存会や中学生の文楽クラブ、地域の人々によって世代を超えて受け継がれている。
氏がこの人形芝居と出会ったのは1971年。撮影当時、各地の民俗芸能が担い手の高齢化や人口減少によって継承の問題に直面し始めていた。安乗でも次世代へつなぐため、中学校に文楽クラブが設立され、保存会の人々が子どもたちを指導するなど、文化継承の取り組みが続けられていた。
氏は何度も安乗に足を運ぶうちに、「記録すること」そのものが文化を未来へつなぐ行為であると強く感じるようになる。消えゆくかもしれない伝統への危機感、舞台裏の人間模様、祭りを支える地域の結束に触れるなかで、安乗の人形芝居が単なる芸能や娯楽ではなく、「地域共同体の記憶そのもの」であることを実感したという。
菅原伝授手習鑑「寺子屋の段」、一谷嫩(ふたば)軍記「熊谷陣屋の段」、御所桜堀川夜討などの各種演目は、舞台の息づかいが聞こえてくるような迫力だ。また、中学生の舞台稽古を指導する保存会の人々、上演の前にお清めの杯をいただく学生、針仕事をこなす遣い手(人形遣い)など舞台裏の様子からは、地域の人々が伝統を「残そうとする意志」を感じることができる。
御所桜堀川夜討「弁慶上使の段」
同展を通して、安乗の人形芝居という民俗芸能の姿とともに、それを支えてきた人々の時間と記憶を可視化する。これらは、記録であると同時に、文化継承の意志と未来への静かなメッセージでもあるとしている。
前野 寛幸(まえの ひろゆき)プロフィール
1948年三重県生まれ。東京綜合写真專門学校芸術科卒業。写真家・杵島隆、大橋勲、田村正衛各氏に師事。
公益社団法人日本広告写真家協会(APA)会員。
書籍:日本テレビ・モグモグゴンボ編「土曜日にはごちそう」(ワニブックス、1995年)、「尾上辰之助写真集」(フォーブリック、2002年)、「彫刻家 星野宣 作品集」(自費出版、1992年)
開催概要
開催期間
2026年3月31日(火)~4月26日(日)
展示点数
60点
図録販売
フォトサロン受付および通信販売にて取り扱い
開館時間
10:00~17:00
休館日
毎週月曜日
入館料
無料


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