「働いて働いて働いて」という言葉が、流行語大賞をとったからか、まるで選挙のキャッチフレーズのように使われている。もちろん真摯に働くことは素晴らしいが、長時間労働を奨励するかのように取る人もいるのではないだろうか。
小室淑恵さんは、2006年に株式会社ワーク・ライフバランスを立ち上げ、20年にわたって「働き方改革」を訴え続けてきた。そして安倍内閣時の「産業競争力会議」民間議員をはじめ、多くの公的組織での民間議員もつとめてきた。まさに「働き方改革」の先駆者といえる。

小室さんがつねに主張しているのは、単に働く時間を短くすることではない。「長時間労働から抜け出し、成果を上げる」というものだ。
「いやいや、残業をなくしたら売り上げが下がるでしょ」という声が聞こえてきそうだが、では小室さんの唱える「残業をなくす」とはどういうことなのか。
2026年1月3日、小室さんはFacebookにこんな投稿をした。
【ワーク・ライフバランス社、大幅赤字!!になるはずが?!】
これは2025年9月10日に、小室さんが高知県の濱田省司知事と会見した施策が、大きな効果をもたらしたという内容だった。
そこで改めて「残業をなくして成果を上げる」とはどういうことなのか、詳しく小室さんご自身につづってもらう。
赤字を覚悟した“無償提供”という選択
年始にFacebookへ書いた「大幅赤字になるはずが?!」という投稿が、思いのほか反響をいただきました。私たち株式会社ワーク・ライフバランスが今年度、赤字を覚悟していたのに黒字に着地しそうだ――という、少し不思議な話です。数字の話でありながら、実は「働き方」の話そのものでもあります。
私たちは創業以来、「長時間労働から抜け出し、成果を上げる」ための働き方改革コンサルティングを提供してきました。累計で約3600社。規模も業種もさまざまですが、共通しているのは、最初は誰もが「うちには無理だ」と言うことです。ところが、仕事の棚卸しをし、会議を減らし、権限移譲を進め、ムダな承認や属人化をほどいていくと、組織は驚くほど軽くなる。残業が減っても成果は落ちない。むしろ上がる。私たちはその現場を何度も見てきました。

この20年、多くの企業を支援してきたことで気づいたことがあります。それは、日本の労働基準法が残業を生み出している構造です。皆さんは「均衡割増賃金率」という言葉をご存じでしょうか。現在、日本の労働基準法では、残業時間には通常時の1.25倍を支払うことが定められています。新たな仕事が発生した際、その仕事を「今いる人材の残業」で対処したほうが安いか、「新たな人の雇用」で対処したほうが安いかが均衡する割増賃金率を「均衡割増賃金率」と呼び、おおよそ1.5倍であることが分かっています。
つまり、日本のように1.25倍しか支払わなくてよい国では、経営者は「仕事に必要な人数より少し少ない人数しか雇用せず、やりきれない仕事を残業で行わせれば安く済む」構造になってしまう。一方で日本以外の先進国は、時間外割増賃金率が1.5倍です。だから「仕事に必要な人数を十分に雇い、残業はなるべく発生させない」インセンティブが働きます。日本の制度のもとでは、経営者が株主に最大の利益を出そうとすると、ブラック経営に近づきやすい構造があるのです。


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