ある研究が、気軽なソーシャルメディア投稿と市民科学の真摯な取り組みが補完しあっていることを発表した。(2026年1月30日公開)

2021年、インドがコロナ禍の終わりを迎えようとしていたとき、SeasonWatchというインドの市民科学プロジェクトを率いていたギータ・ラマスワミ(Geetha Ramaswami) 氏と2人の志ある若い生態学者は、ソーシャルメディアで「ゴールデン・シャワー・ツリー」、「フレーム・オブ・ザ・フォレスト」、「レッド・シルク・コットン」という花の画像を探し始めた。それは美しい花々を鑑賞するためではなく、これらの樹木が気候変動の影響をどのように受けているのか知るためであった。彼らが最近発表した論文はこれら3種のインドの顕花植物の地理的分布をテーマとしており、Journal of Biosciences誌に掲載された。

2010年に設立されたSeasonWatch.inは、市民科学者が近所の木を登録できるプラットフォームである。市民科学者は登録後、毎週、木の葉、花、果実の数を観察する。すると科学者はデータにアクセスして、樹木が季節ごとに見せる発葉、開花、結実のパターンを知ることができる。ラマスワミ氏はSEED(環境開発のための学生エンパワーメント)と呼ばれるエコクラブのプログラムについて「最初のデータは、ケーララ州の生徒と教師から実際に提供されたものです」と述べた。「そして15年経った今でも、生徒たちは市民の中でも最も積極的で貢献度の高いグループです」

2021年、ラマスワミ氏は多くの人々がソーシャルメディアに花の写真をアップロードしていること、そして時には写真の日付や場所などのメタデータを画像から抽出できることに気づいた。そのとき、ラマスワミ氏は、ソーシャルメディアの力とSeasonWatchのデータを組み合わせることで、顕花植物の季節性を特定できるのではないかと考えた。

ソーシャルメディアのユーザーはインド全土からこれらの植物の画像を投稿しているため、同じ顕花植物が世界中で同じ時期に開花するかどうかを調べることもできる。グローバルノースでは、樹木が環境の変化に応じて発葉、開花、結実の時期を長期的に変化させることが研究で明らかになっている。「熱帯地方の樹木がここで何をしているのかを理解するには、大規模で長期的な研究が必要です」とラマスワミ氏は説明した。

3人のチームは、Facebook、Instagram、X(旧Twitter)などのソーシャルメディア投稿、Indian Biodiversity PortalやiNaturalistなどの画像を主に扱う市民科学ポータル、Flickrなどのデジタル写真リポジトリから250~350枚の画像を選び、手作業で注釈を付けた。

同じ樹木でも気候が異なれば生存戦略も異なってくる場合がある。例えば、アマルタスという鮮やかな黄色の花を咲かせる一般的な樹木がある。この樹木は乾燥地域と湿潤地域で異なる生存戦略を持つ。乾燥地域では、開花前にまずすべての葉を落とすが、十分な雨が降る地域では、乾季でも葉を落とすことはない。そのため、樹木が気候変動に反応しているかどうかを判断するには、科学者はまず、同じ地域に存在する樹木が見せる経時的な挙動の変化を理解する必要がある。

研究チームは、「ゴールデン・シャワー・ツリー」(通称アマルタス)、「フレーム・オブ・ザ・フォレスト」(通称パラッシュ)、そして「レッド・シルク・コットン」(通称セマル)を調べた。 3年半の集合データを分析した結果、ソーシャル メディアと SeasonWatch のデータセットは補完し合うことが分かった。

ラマスワミ氏は「これらのデータセットは全く異なる形式で、全く異なる理由で収集されたのですが、多かれ少なかれ同じ情報を伝えています」と語る。同様の研究が温帯気候について行われたが、市民科学から得た結果と科学的に収集されたデータセットから得た結果は矛盾していた。

研究チームがアマルタス、パラッシュ、セマルの開花パターンを整理したところ、3種類の樹木はすべて一年中開花の兆候を見せた。アマルタスは、同じ緯度でも年間を通して開花の兆候が見られ、同じ緯度帯でも特に北緯13度まで(カルナータカ州のベンガルールに近接する地域)で顕著であった。とりわけ、インド南部のケーララ州のアマルタスについては注目に値する。かつて、この地域でアマルタスが開花するのは3月と4月だけだった。ラマスワミ氏は「しかし今では、9月、10月、11月にも花を咲かせている木があります」と述べた。これは気候変動の兆候であるかもしれない。

緯度が高い地域では、同じ樹木であっても開花する期間は限られていることが分かったため、樹木の季節性について具体的な結論を導き出すにはデータセットの限界があった。これは、同じ植物であっても緯度による地理的差異があることを示す。

ラマスワミ氏は、気候変動が樹木の開花パターンに与える影響について具体的な結論を導き出すには、科学者はSeasonWatch のプロジェクトを通じてさらに多くの市民の参加を呼び掛ける必要があることを認めた。温度と湿度が開花に影響を与える可能性はあるものの、現在分析されているデータではその結論を出すことはできなかった。言語の壁やスマートフォンのアクセスなども、インド全土における市民科学データ収集に格差を生じさせることとなろう。ソーシャルメディアの投稿では、写真の撮影日時や場所など、科学者が必要とするメタデータが欠けている場合があり、そのため、科学目的に使用できないことがある。

それでも、このプロジェクトには、市民科学者やソーシャルメディアから収集されたデータを用いて科学的な疑問に答えるという実現可能性がある。ラマスワミ氏はまた、慈善団体である「自然保護財団」(SeasonWatchはこの財団の一部である)の仲間やその他の団体と協力し、ジャックフルーツ、マンゴー、タマリンドなどといった熱帯樹林について、同様のパターンを確認しようとしている。

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