2026年1月28日 午前7時30分
【論説】長引く物価高が国民生活に重くのしかかる中、衆院選が公示された。多くの党が第一声で訴えたのは減税だ。与野党とも食料品の消費税率8%を引き下げる方針を打ち出し、国民に負担軽減をアピールする。しかし、どの党からも説得力ある財源の説明は聞かれない。与野党は、将来世代に対して責任ある政策論議を戦わせるべきだ。
直近の衆参両院選挙で自民党は大敗し、政権運営に苦しんだ。高市早苗首相は権力基盤の強化へ衆院解散翌日から投開票まで16日間の短期決戦に打って出た。「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか」を有権者に決めてもらうためだと宣言。自民党と日本維新の会の連立に伴う「重要政策の大転換」について、長丁場の通常国会が始まる前に信任を得る必要性があるとも述べた。
国の根幹に関わる政策を転換すると訴えた。戦略的財政支出、国家予算づくりの改革、安全保障政策の強化などを掲げているが、内容はまだ判然としない。重要課題があるのなら、国会で丁寧に議論を尽くし、異論にも耳を傾け合意形成を図る「熟議」こそ政権運営の大原則だ。
「責任政党」を掲げてきた自民は初めて消費税減税を掲げた。維新との連立合意に基づいて食料品の2年間消費税ゼロを公約に挙げ、野党も交えた「国民会議」で「実現に向けた検討を加速する」とした。開始時期や財源を会議に丸投げしているように取れる。
立憲民主党と公明党が結成した新党「中道改革連合」は、食料品消費税率「恒久ゼロ」を訴えるが、財源確保の仕組みは不透明だ。8%の軽減税率をゼロにすれば税収は年5兆円を失うことになる。
市場では財政膨張を警戒して長期金利が急上昇し、円安基調となっている。将来世代の不安を打ち消す財政健全化についても目標と道筋を示すべきだ。
高市氏は社会保障をテーマに1月中に野党も交えた「国民会議」の初会合を開くと明言していた。減税と給付を組み合わせる「給付付き税額控除」の制度設計について議論する予定だったが解散で議論は棚上げされた。急激な人口減少に伴う持続可能な制度の再構築を急がねばならない。
日本経済成長のための構造改革も大きな課題だ。自民は経済安全保障や食料・エネルギー安保分野など民間だけで解決できない課題に政府が積極的に取り組むとする。中道は国家プロジェクトによるAI(人工知能)などの最先端技術の研究開発の推進を挙げる。中長期視点の政策も冷静に見極める必要がある。
選挙戦で問われるのは、将来世代を見据えた責任ある日本の針路を示せるかどうかだ。選ぶ側はしっかり目をこらし、政策を選ぼう。

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