
イトーキ(東京都中央区、湊宏司社長)は2026年1月、滋賀県近江八幡市の滋賀工場内にあるチェア工場オフィスを全面改修し、「ITOKI DESIGN HOUSE SHIGA」としてリニューアルオープンした。製造現場を単なる生産拠点から「価値創出の場」へ位置付け直し、データ活用とデザインを掛け合わせて開発の質とスピード、従業員エンゲージメント、採用力の強化につなげる共創型のモノづくり拠点とする。
背景には、オフィス投資がエンゲージメント向上や採用力強化の経営施策として重視される一方、製造業の工場執務スペースは改善が遅れがちという課題がある。滋賀工場では外国人材、障がい者、女性など働き手の多様化が進み、誰もが力を発揮し長く働ける環境整備が重要テーマとなっていた。これまで休憩室の改修など段階的に改善を進めた結果、技能職の求人数は2023年から2025年にかけて約4倍に拡大し、離職率も半減したという。社外からの関心も高まり、工場見学者数が増加していることも後押しとなった。
新拠点は「次世代のワークスタイルを構想し、実践、体験するオフィス」を掲げる「ITOKI DESIGN HOUSE」の考え方を、製造拠点の条件に即して再構築した。ショールーム、ギャラリー、ラボなどの機能を製造現場と有機的につなぎ、開発力の強化と人材の成長、ブランド価値の向上を同時に実現する工場オフィスのモデルを狙う。イトーキと外部パートナーが交わる「開かれたモノづくり拠点」をコンセプトに、人と情報が行き交い、学びと検証が循環し、共創が日常的に生まれる場づくりを進める。
空間設計の特徴は、データとデザインを組み合わせ、改善サイクルを回し続ける仕組みを組み込んだ点にある。製造・開発・共創・執務・食堂などの異なる機能を上下に積み重ねる「フロアスタッキング」を採用し、上下階の動線で人・情報・アイデアの偶発的な交差を促す。床や壁、展示什器にはグリッドや目盛りの意匠を取り入れ、日常の中でスケール感を意識しやすい環境とした。
運用面では、位置情報データ、サーベイデータ、スペースデータなどを組み合わせて分析する「Data Trekking」を導入。利用状況を可視化し、レイアウト変更や運用改善を継続的に行うことで、開発力と人材価値を高め続ける工場づくりを掲げる。
フロア構成は、1階を社外パートナーや来訪者を迎える共創の起点とし、製造ライン近接の利点を生かして技術展示や試験室を通じて品質・安全性・技術背景を体感できる場とする。2階は開発ラボ、エルゴノミクスラボ、スタジオを集約し、アイデア検討から試作・評価までを一連で行う中核フロア。モーションキャプチャーやシートトレーサーによる身体データ検証、MRを活用した東京拠点との接続で、拠点・部門横断の共創を日常化する。3階は執務フロアとしてグループアドレス制を採り、議論・検証のエリアと没頭のエリアを併設。琵琶湖の葦(ヨシ)や花崗岩など地域素材も取り入れた。4階は食堂兼イベントスペースとし、日常の休憩からワークショップまで対応する交流の場とする。
拠点所在地は滋賀県近江八幡市上田町72。オフィス延床面積は1~4階合計で556平方メートル、在籍人数は113人。法人向けの工場・オフィス見学も平日9時~17時に完全予約制で受け入れ、製造業における働く環境の更新にも貢献するとしている。
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