2025年11月29日のJ2最終節。残留を争うふたつのクラブの運命はどのように交錯し、なぜ予想もつかない劇的な結末を迎えるに至ったのか。J3に降格したロアッソ熊本の織田秀和GMと、J2残留を果たしたカターレ富山の左伴繁雄社長。両クラブの重要人物の証言から、「悲劇」と「奇跡」の裏側に迫った。(NumberWebノンフィクション/全4回の4回目)※文中敬称略
「今の富山なら絶対勝つ」共有された“根拠のない自信”
ここからは、富山県総合運動公園陸上競技場でのカターレ富山vs.ブラウブリッツ秋田、えがお健康スタジアムでのロアッソ熊本vs.ヴァンフォーレ甲府、両試合の後半を2元中継的に振り返ることにしたい。
先に動きがあったのは富山。53分に古川真人がPKを決め、待望の先制点が入る。ただし、安達亮監督が攻撃のスイッチを入れたのは、6分後の59分。ここで一気に3枚の交代カードを切る。富山の社長を務める左伴繁雄はこう証言する。
「松岡大智、吉平翼、亀田歩夢ですね。3人ともゲームメイクするのではなく、ボールがあれば一気に前へ運べるタイプ。彼らがピッチに入った瞬間、選手全員が『これは前に行くサインだ』と感じたと思います。ここから失点しない前提で、ガンガン前に行くスイッチが完全に入っていました」
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その1分後の60分、布施谷翔がヘディングで追加点。しかし秋田も64分に3枚代えを行い、71分に岡﨑亮平のゴールで1点差に──。だが、左伴の自信は揺るがない。
「心理的ダメージは、まったくなかったです。むしろ『よし、あと2点ね』と割り切っていた。それくらいポジティブに開き直っていたんです。ウチは秋田とは相性が悪かったけれど、こうなると相手がどこでも関係ない。『今の富山なら絶対勝つ』という根拠のない自信を、選手もサポーターも共有していたと思います」
熊本GMの証言「本当に『やべぇ』と思ったのは…」
一方の熊本はどうなっていたか。後半の立ち上がりも、特に守りに入るわけでもなく、普通に勝ちに行くスタイルを維持していた。熊本のGMである織田秀和が、当時の心境を振り返る。
「時間が迫るにつれて、裏の試合の動きが激しくなった。富山が2点入れたけど、秋田が1点返して『これなら大丈夫だ』と思っていたのですが、そこからさらに得点を重ねましたからね。とはいえ、最後の最後まで『危ない』とは思っていなかったんです。本当に『やべぇ』と思ったのは、ウチの試合が0-0で終わる直前、富山が4点目を取って4-1にしたという知らせを聞いた瞬間でした」

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