ブラビア(BRAVIA)の生産をTCLが担うことになっても、悲観する必要はない。むしろこれは、ソニーのテレビが生き残るための極めて現実的で、希望のある選択だ──。
数ヶ月前、元CNETオーストラリア編集者のマーク・セレルズ氏がBlueskyに投稿した言葉が、昨日ふと頭をよぎった。「ベビーブーム世代のソニー愛は、もはや異常なレベルだ。あんな熱量は見たことがない」。
この言葉を思い出したきっかけは、TCLとソニーが合弁会社を設立し、家庭用オーディオやテレビ製品、特に「ブラビア」の生産を行うというニュースだ。
この決定にショックを受けている人も多いだろう。古くからのファンなら尚更だ。だが、ここは冷静に事実を直視したい。ソニーはここ数十年、テレビという製品を純自社製で作ってきたわけではない。今回の発表の本質は、製造パートナーが変わるという点に尽きる。
新パートナーとなるTCLは、パネル製造から組み立て、物流網に至るまで全てを自社で完結できる「垂直統合型」の強みを持つ企業だ。近年のTCL製品が高い評価を得ていること、そして圧倒的なコスト競争力を踏まえれば、画質に定評のあるソニーにとって、この提携は極めて合理的な選択と言える。
私はかつて、日本で行われた初代ブラビアの発表会に参加する機会を得た。あれこそが、現在に繋がるすべての始まりだった。ソニーが長年の屋台骨だったブラウン管や、自社生産可能だったプラズマと決別し、薄型・軽量で焼き付きのない液晶の世界へ踏み出した瞬間だ。
当時の初代ブラビアのパネルを供給していたのは、サムスンとソニーの合弁会社「S-LCD」だった。つまり今回のTCLとの提携は、かつての成功モデルの再来に過ぎない。
80〜90年代、ソニーはトリニトロンで絶大な支持を築いたが、2005年の液晶への転換は全く異なる戦いだった。ソニーが持ち込んだのは、今も同社が誇る「画像処理ノウハウ」であり、パネル自体は他社製に依存していたのだ。
為替やマクロ経済の話は抜きにするが、米国市場においてソニーが、自社ブランドの安易なライセンス供与(切り売り)を拒み続けてきた数少ない日本メーカーであることは偶然ではない。シャープ、パイオニア、東芝など多くのブランドが米国から撤退し、そのブランド名だけが安価なテレビに貼られるようになったのとは対照的だ(パナソニックは最近再参入を果たしたが、かつての勢いと比較すれば限定的だ)。
確かにゲーム事業はドル箱だが、あれはハードウェアよりもソフトウェアで稼ぐビジネスだ。一方、テレビにはNetflixやYouTube TVのような、継続的な収益を生むサブスクリプション基盤がない。「Sony Pictures Store」や「PlayStation Vue」などで試行錯誤はしたものの、市場の巨人たちには太刀打ちできなかった。
ファンが最も懸念しているのは、TCLが51%の過半数株式を握る点だろう。主導権を握ったTCLが、パネル技術を液晶や有機ELからマイクロLEDへ切り替える可能性もある。だが、それが本当に問題だろうか?
私自身、トリニトロンとWEGA(ベガ)のリアプロテレビを愛用してきたし、今でも良い思い出だ。パネルの製造元がどこであれ、ソニーブランドへの信頼は揺らいでいない。実際、2025年モデルの「BRAVIA II」は高い評価を得ている。消費者は依然としてソニーを「優れた製品パッケージに仕上げるメーカー」として信頼しているのだ――たとえそこに「ソニー税」とも揶揄される割高な価格が上乗せされていたとしても。
私の手元には、来たるソニーの新テレビラインナップを告知するチラシがある。「And Don’t Forget… Sony RGB is Coming. Spring 2026(ソニーRGB、2026年春登場)」の文字。CES 2026のトレンドとなった液晶のバックライト自体にRGBのドットを配置する「「RGB-Mini LED」が、早くも今年のソニー製品に搭載されるようだ。
面白いのは、TCLもCESの会場で、このRGB方式の対抗馬(アンチRGB)として自社の「Mini-LED X11L」を猛烈にアピールしていたことだ。しかしその一方で、TCLのブースの片隅には、量産前のRGBバックライト搭載機がひっそりと展示されていた。ソニーの新モデルに搭載される「RGB」の供給元がTCLだとしても、もはや驚きはない。
結局のところ、この新会社設立はソニーやその画質の「死」を意味するのか? 結論から言えば、ノーだ。2027年に予定される新体制下でも、ソニーはその名を残し、テレビという看板製品のデザインや生産において一定のコントロールを維持できる。これは他の日本メーカーが成し遂げられなかった偉業であり、今後長きにわたりソニーの地位を守ることになるだろう。
2040年には、私のようなライターがこう書いているかもしれない。「ジェネレーションX(今の現役世代)のソニー愛は、異常なレベルだ」と。
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。

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