「ニラの生産部会で、女性を対象にした交流会を開く」。日本農業新聞「農家の特報班」はそんな情報をキャッチした。仕掛けたのは、山形県のJAおいしいもがみ。特定の品目で女性限定の会合を開くのは初という。記者が現地に飛び、交流会を取材した。

 交流会が開かれた12月中旬。山形県戸沢村の会場に着くと、既に多くの女性でにぎわっていた。JAにら生産者協議会に所属する管内7地区49人が訪れていた。

 交流会の中盤、一斉に名刺交換が始まった。地区を超えて交流する機会は少なく、対話のきっかけとなるよう、JAはこの日のために全参加者の名刺を1人30枚用意していた。


名刺交換などをしながら交流を深めた女性農業者ら。自己紹介をしたり、栽培技術などの情報を交換したりした(山形県戸沢村で)

 記者は、複数の参加者を取材。就農5年目で夫とニラ90アールを栽培する若手農家、高橋章子さん(46)は、名刺交換した相手に、収穫の時間帯や調整作業のこつなど営農に関連する疑問を熱心に尋ねていた。

JAが用意した自身の名刺を渡し、先輩農家にニラ栽培について聞く高橋さん(右)(山形県戸沢村で)

 高橋さんは、栽培講習会には夫が参加することが多いといい「私自身、もっと経験や知識が必要なので、ベテラン農家の方と話せる機会は貴重。とても参考になった」と話す。

 JAの園芸品目のうち、ニラは販売額が最大で、管内の主力品目。あえて女性限定の交流会を開いたのは、目標販売額の達成に向け、女性農業者がニラ栽培に関わるのを後押ししたいと考えているからだ。

 「ひょう害どうだった?」「うちは従業員増やしたよ」。会場のあちこちで、参加者の声が聞こえてくる。JAが用意した自身の名刺を交換しながら、熱心に話していた。

 記者の取材に応じてくれた後藤利花さん(56)は「普段の栽培講習会は男性中心で参加しにくくて。まだ知識も浅く、自信もないし…」と明かした。夫が手がけるニラ1・6ヘクタールの栽培に関わるようになって1年だという。

 「交流会なら気兼ねなく質問できそう」と思って参加。ニラの調整作業を手作業でこなしているが「名刺交換した人から、専用の機械を使っていると聞いた。勉強になった」と話す。

 夫の退職を機に、ニラ70アールの栽培を始め、就農5年目の石山久子さん(69)は「ベテランに経営スタイルを聞きたくて参加した」と理由を明かす。複数人を雇用していることから、名刺交換した相手に雇用人数や働き方について質問。「栽培の体制づくりなど、今後の経営を考える上で参考になった」と話した。

 ニラを栽培する女性農業者で、JA理事でもある信田泉さん(69)は同じ地区の女性を複数人誘って参加した。「高齢による離農は少なくない。産地を持続させるには、女性の力は欠かせない」と女性農業者を後押しするJAの姿勢に期待を寄せる。

仕掛け人は女性管理職

佐藤昌子営農指導課係長

 今回の交流会を企画したのは、営農指導課の佐藤昌子係長。営農指導員として農家と対話する中での気付きがきっかけだった。「男性と同じように女性もニラ生産に携わっている。でも、JAが勉強会を開いても参加するのはほとんど男性」と佐藤係長は話す。

佐藤係長

 一方、管内のニラは、JAが定める6つの園芸重点振興品目の中で販売額が最も高い主力作物。JAは販売額10億円を目指しているが、直近3年の販売額は9億円後半台で推移している。

出荷用の荷姿となったニラ。JAは販売額10億円を目指している(山形県真室川町で=JAおいしいもがみ提供)

 佐藤係長は「販売額を伸ばすには、女性の技術と経営力を高めることが欠かせない」と確信。ニラ産地として、さらに飛躍するため、今回の交流会を企画した。「皆さん進んで栽培技術の情報交換をしていた。意欲のある女性農業者が多いことが改めて分かった」と手応えを得る。

 にら生産者協議会は25年度で231人が所属し、栽培面積は127ヘクタール。JAは今後、収量の増加や面積の拡大を目指し、女性向けに技術などを学ぶ場も設ける予定。佐藤係長は「女性生産者を育成し、JAとの結び付きを深めたい」と考える。


ニラの目ぞろえ会に参加する女性農業者ら(山形県真室川町で=JAおいしいもがみ提供)

多様な視点で産地拡大

押切安雄組合長


押切組合長(JAおいしいもがみ提供)

 園芸重点振興品目での女性の交流会は、JAとして初の試みだった。佐藤係長の提案を採用したJAの押切安雄組合長は「女性も主体的に農業に取り組むことで、生産効率の向上や規模拡大につながる」と期待を寄せる。「今後はニラだけでなく、他の品目でも女性を対象にした集会を開きたい」(押切組合長)と構想する。

 佐藤係長について「『親しみやすく相談しやすい』と聞いている。女性農業者の力を引き出す上で欠かせない存在」と評価する。今後は、営農指導の部門でも女性管理職を増やし「多様な視点で産地拡大へアプローチしたい」と思い描く。


ニラを収穫する農家(山形県真室川町で=JAおいしいもがみ提供)

<取材後記>

 男性が経営主の場合、栽培講習会や会合には男性が出席しがちだ。女性農業者からは「知識を身につけるため自分も参加したいが、話についていけず迷惑をかけそうで不安」という声を聞いた。こうした状況では、女性が技術を学ぶ機会はさらに失われてしまう。技術支援に加え、安心して相談できる環境づくりが、JAや行政に一層求められているのではないか。

(高内杏奈)

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