おぼろに薫る 茶の心 金沢生まれ・岡本さん 京都に体験施設

五感を研ぎ澄ませるため、薄暗い部屋でお茶がたてられる=京都市上京区中小川町で

「日常生活の美しさ 気付いて」 千利休ゆかりの茶室や歴史的な建造物がひしめく京都市上京区中小川町で、茶の湯文化の精神を感じられる体験施設「Oboro(おぼろ)」が昨年3月に誕生した。手がけるのは、金沢市生まれの岡本拓さん(39)。「この今に集中してもらい、日常生活の美しさに気付いてもらう場」を提供している。(沢井秀和)

 「うなぎの寝床」とも言われ、奥に長く続く築100年超の町家を活用した。6畳、4畳半、6畳の三つの部屋を、奥に進むにつれて薄暗くなり、真ん中の部屋は灯籠、最後の部屋ではろうそくがともされる。

 真ん中の部屋では、ほうじ茶などのウエルカムティーが振る舞われ、茶の香りが漂う。最後の部屋では、釜から上がる湯気の音がかすかに響く。視覚以外の感覚を研ぎ澄ませるプロセスを形にした。

 「伝統文化をかみくだいて、けいこする人と興味のある人の間をつなぐ」。茶道歴は8年。人工知能(AI)時代を迎え、心がより重要になってくると、起業した。昨年の大阪・関西万博、抹茶ブームも追い風になると考えた。

 原点は、お茶を通じた異文化体験。留学したスイスで抹茶をたてたら、言語、人種を超えて関心を寄せてもらえた。仕事の合間を縫って出かけたポーランドでは、通りに茶道具セットを広げてお茶をたてて、地元の人と交流した。「お茶はパスポートになる」と感じた。

 外国人向けの茶道体験プログラムは、作法や型の説明を英語で通訳されることが多いが、日本人なら当然と思われる茶道の基本的な部分が抜け落ちているように思えた。本来なら、待合で湯を口にし、路地を通り、手を清める。これを解きほぐし、町家空間で体験できるよう再構成した。

 「日常にこそ美しさが存在していて、それに焦点を当てていく。閉ざされた空間の中で、気づきを感じてもらう」。現在の利用対象者は海外からの旅行者中心だが、企業向けの研修プログラム、アート作品展のコラボレーションに広げることを思い描いている。

 「Oboro」と名付けたのは「完璧な姿より、ゆらめきがあり、うつろう姿に趣を見いだす」という思いから。体験料金は7千円から。問い合わせはinfo@oboro.co

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