朝日中高生新聞 松村大行
オーストラリアで去年11月に法律が成立し、その是非について世界で議論が巻き起こった「16歳未満へのSNS禁止」措置が今月10日に始まりました。飲酒・喫煙のほか、政治への参加やさまざまな大会への出場など、中高生年代には年齢による制限がかかっています。

16歳未満のSNS利用に規制がかかるオーストラリアで、2024年にSNSの利用とスマホの所有を原則禁止する校則を設けた学校の子どもたち=10月、豪州西部パース 朝日新聞社
必須インフラ…悪影響阻止の一手
各国で規制を検討
オーストラリア(豪州)で今月10日に始まった16歳未満へのSNS禁止措置。フェイスブック、インスタグラム、X、TikTok、ユーチューブなどが規制の対象です。
デンマークは15歳未満、マレーシアも16歳未満の子どものSNS利用を近く制限する方向で動き出しています。米国でもいくつかの州が、未成年の利用時間を制限したり、企業による個人情報の収集を規制したりしています。
世界で人気のSNSを運営するのは民間の企業。ただ、その経済力や社会的な影響力は国を上回るほどに巨大化しています。社会に情報をめぐらせ、時に利用者の心のよりどころとなるインフラ(社会基盤)の役割も担います。
「そうした企業が、自らのサービスに利用者を1秒でも長くとどめ、依存させるような行いをしている。(コンテンツの表示順などを決める)アルゴリズムも外から見えない」。公共政策論や情報社会論などが専門の山本達也教授(清泉女子大学学長)は、そうした状況に待ったをかけようとする国とSNS企業との緊張関係が、規制が広がる背景にあるとみています。
法律で未成年が禁じられている行いの代表例が飲酒と喫煙です。「未熟」な体に与える悪い影響を遠ざけるのが主な理由です。SNSも子どもの睡眠を妨げたり、落ち着きや集中力を損ねたりすることなどが指摘されますが、酒やたばこと比べると個人差も大きく、心身への影響は見えにくいです。そうしたものに触れる自由に国が制限をかけるのは、「歴史的にみると新しい出来事」だといいます。
法制化は議論巻き起こす効果
豪州で10日以降、16歳未満の人がSNSにアクセスしても、本人や保護者に罰則はありません。利用を防ぐ「合理的な措置」を怠った企業に最大4950万豪ドル(約51億円)の罰金を科します。利用を防ぐには年齢確認が必要ですが、プライバシーを尊重しながら確認を徹底するのが難しく、豪州政府は企業に強制することを見送りました。
スタートから「抜け穴だらけ」になりそうですが、山本教授は社会に投げかける意義は十分あると話します。「オーストラリアでの法制化は日本を含め、世界的に注目を集めました。課題をみんなで真剣に議論する機会ができたことの価値は大きいのでは」
欧州連合(EU)の欧州議会は11月下旬、EU加盟27か国でSNSを利用できる最低年齢を16歳とする決議案を賛成多数で採択。EUの行政を担う欧州委員会に迅速な法案提出を求めました。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は「デジタル成人年齢(digital majority age)」という考え方を打ち出しています。飲酒や喫煙などと同じく、SNS利用に適した年齢を設けるのは可能だと訴えます。
(松村大行)
「お酒は20歳から」は100年前から
時代で変化―――――年齢制限あれこれ
年齢制限は時代によっても変わります。日本では未成年(20歳未満)の喫煙が明治時代の1900年に、飲酒は大正時代の1922年に法律で禁止されました。2022年に成人年齢が18歳に引き下げられても、健康被害のおそれなどから20歳ですえ置かれました。

1900年に成立した「未成年者喫煙禁止法」の御署名原本 国立公文書館所蔵
意外と年齢制限がないものもあります。例えば所得税や消費税などの税金は、お金を稼いだり、物を買ったりすれば、何歳でも課されます。
弁護士、検察官、裁判官になるための司法試験は大学卒業後、法科大学院に進学して受験する一方で、予備試験に合格して受験資格を得る道もあります。予備試験は年齢や学歴の制限がなく、今年、司法試験に合格した1581人の中には18歳の人もいました。
制限撤廃や独自ルールも
プロ野球の新人王も、過去の打席数や登板イニング数といった条件を満たせば、何歳でも選ばれます。日本からこれまで2人、優勝者が出ている「ミス・ユニバース」出場には18~28歳という年齢制限がありましたが、24年に上限を撤廃しました。

ミス・ユニバースの韓国大会に80歳で出場した候補者(中央)=2024年9月、韓国・ソウル 朝日新聞社
生成AIの「チャットGPT」は13歳以上など、利用できる年齢を独自に定める民間のサービスもあります。世界的に人気のゲームのプラットホーム「ロブロックス」の運営企業は11月18日、チャット機能に「顔年齢確認」を追加すると発表しました。自動で推定された年齢ごとに、チャットを許可する相手の範囲を定めます。大人が子どもになりすまし、チャットで連絡をとろうとするのを防ぐことなどがねらいです。
日本における さまざまな年齢制限

フィギュアスケートで活躍した浅田真央さんは2005年12月のグランプリファイナルを15歳で制覇。ただ当時の年齢制限のルールにより、翌年2月のオリンピック出場がかないませんでした 朝日新聞社
年齢
できること・制限
14歳
刑法が適用される
囲碁の日本棋院の院生募集年齢上限
15歳
中学卒業後、アルバイトが可能に(新聞配達や子役など一部の仕事は中学生でも可能)
16歳
バイク(大型を除く)や電動キックボードに乗れる
献血が可能になる
17歳
フィギュアスケートでオリンピックに出場できる
18歳(成人年齢)
婚姻や普通自動車免許取得が可能に
新NISAの口座を開設できる
クレジットカードの申し込みが可能に(高校生は不可の場合が一般的)
20歳
飲酒・喫煙、馬券の購入が可能に
23歳
五輪サッカー男子の年齢上限(オーバーエージ枠の例外あり)
25歳
衆議院議員、市区町村長、地方議会議員選挙などへ立候補できる
26歳
将棋の奨励会で四段に上がれなければ強制退会に
30歳
参議院議員と知事選挙へ立候補可能
31歳
ショパン国際ピアノコンクールに出場できなくなる
ワーキングホリデー制度を利用できなくなる(開始は18歳から)
40歳
数学のフィールズ賞受賞の対象外に
43歳
不妊治療における保険適用の対象外に(治療開始時点での女性の年齢)
55歳
骨髄バンクに登録できなくなる
富士急ハイランドのジェットコースター「高飛車」「ええじゃないか」に乗れなくなる(遊園地やアトラクションによりさまざまな制限あり)
60歳
多くの企業で定年を迎える
多くの自治体で教員採用試験を受験できなくなる
70歳
献血ができなくなる
73歳
自民党から衆議院の比例代表に立候補できなくなる
(朝日中高生新聞2025年12月7日号)
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