公開日時 2026年01月12日 05:00更新日時 2026年01月12日 06:30
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「沖縄戦の記憶継承プロジェクト―戦争をしない/させないために」で講演する蟻塚亮二さん=10日、那覇市泉崎の琉球新報社
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長嶺晃太朗
戦争や震災の体験によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)を診察・研究してきた精神科医の蟻塚亮二さんが10日、那覇市の琉球新報社で講演した。沖縄戦のトラウマ(心的外傷)の影響が、世代を超えて貧困や暴力といった形で連鎖しているとの見方を示し、「悲しいことを『悲しい』と言えることが大事だ」と語った。
講演は「沖縄戦の記憶継承プロジェクト―戦争をしない/させないために」(同プロジェクト実行委員会主催)第4期2回目の講座の一環として開かれ、受講生約50人が参加した。
蟻塚さんは、沖縄戦によるPTSDの事例を、東日本大震災で被災した福島の事例を交えながら紹介した。高齢になってから不眠に苦しむ人や、認知症を発症した後も「防空壕に逃げなきゃいけない」などと訴え、暴れたり泣き叫んだりする人がいると説明した。
また、戦争を体験した世代のトラウマが、第2世代の養育環境に影響し、貧困やネグレクトといった問題として、現在まで世代を超えて連鎖していると指摘した。さらに、沖縄は明治以降の同化政策によって固有の言葉を奪われた経験があり、それが文化的なトラウマとなって、自己肯定感の低下や無力感につながっているとの見方も示した。
一方、蟻塚さんは「沖縄には泣くことができる文化がある」と強調する。米軍属の女性殺害事件に抗議する県民大会に参加した経験を紹介し、参加者が率直に悲しみを共有していたことに触れ、「『泣いてはいけない』、『頑張ろう』ではなく、みんなで悲しむことは強みだ。トラウマを抱えた人を救うことにもつながる」と語った。
受講生の長嶺悠希さん(38)=豊見城市=は「戦争によるトラウマが、80年前から今に続いている問題だと実感した」と振り返った。この日は、沖縄高校生平和ゼミナールによる活動報告のほか、琉球新報の小那覇安剛論説委員による補講もあった。
(長嶺晃太朗)

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