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2025.03.27


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ペルー次期選挙は来年4月に、選挙の行方は混とん状態か
~大統領選の有力候補は「団子状態」、現時点では極めて見通しにくい状況にある~



西濵 徹



要旨

ペルーのボルアルテ大統領は、次期大統領選と上下両院議員選を来年4月12日に実施することを明らかにした。ボルアルテ氏は、大統領昇格の経緯や不正蓄財、職務放棄の疑惑などを理由に「世界で最も不人気なリーダー」の称号を得るなど厳しい状況に直面してきた。他方、景気の足かせとなってきた物価高と金利高の共存状態は大きく後退し、昨年の経済成長率も+3.3%となるなど景気の底入れが確認されている。
ただし、足元でも散発的に反政府デモが確認されている上、犯罪や社会不安が増大する動きが続くなど円滑に選挙を迎えられるかが課題となる。さらに、過去に3度大統領選に出馬するも惜敗したケイコ・フジモリ氏の動向も注目される。とはいえ、次の選挙を経て一院制議会は二院制に変更されるなど選挙情勢は大きく変化することが予想される。また、前回大統領選では当初は泡沫候補とされたカスティジョ氏が決選投票を経て勝利したことに鑑みれば、現時点において選挙の行方は極めて見通しにくい状況にあると言える。


ペルーのボルアルテ大統領は25日、次期大統領選挙と上下両院議会選挙を来年4月12日に実施することを明らかにした。同国では、2021年の大統領選を経て急進左派のカスティジョ前政権が発足したものの、中道右派が多数派を占める議会との対立を理由に政権運営はこう着するとともに、カスティジョ氏自身にも職権濫用や汚職の疑惑が噴出した。そして、景気低迷も重なる形で政権支持率は急落したため、翌22年末に議会はカスティジョ氏に対する弾劾手続きを可決して失職に追い込んだ。その後、カスティジョ前政権において副大統領であったボルアルテ氏が大統領に昇格した(注1)。しかし、同氏は無所属の上、大統領昇格を巡って議会の多数派を占める中道右派勢力と協調したため、カスティジョ氏の支持者を中心に反政府デモが長期化し、幅広く経済活動に悪影響を与える事態に発展した(注2)。

足元では全土で展開される大規模な反政府デモこそ鎮静化しているものの、依然として局所的に散発的にデモが展開される状況が続いている。こうした背景には、ボルアルテ氏を巡っても不正蓄財や職務放棄といった様々な疑惑が取り沙汰されており、昨年末には政権の不支持率が95%(支持率は3%)と『世界で最も不人気なリーダー』という不名誉な称号を得る事態となったことも影響している(注3)。他方、景気の足かせとなってきた物価高の動きを巡っては、商品高の一巡や米ドル高の一服なども追い風に頭打ちしており、足元では中銀目標(中央値)を下回る伸びとなるなど落ち着いた動きをみせている。こうした動きも追い風に、中銀は一昨年後半から今年1月まで累計300bpの利下げに動くとともに(7.75%→4.75%)、金利水準は『中立領域』に入ったと表明するなど利下げ局面の終了を示唆する考えを示している。とはいえ、物価高と金利高の共存という内需の足かせとなってきた要因は大きく後退していると捉えられる。

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こうした動きも追い風に、昨年の景気は底入れの動きが確認されるとともに、昨年通年の経済成長率も+3.3%と前年(▲0.4%)から2年ぶりのプラス成長に転じており、ここ数年は『足踏み状態』が続いた景気を巡る状況は改善している様子がうかがえる。こうした状況も、ボルアルテ政権が度々先延ばししてきた次期大統領選と上下両院議員選の実施時期を確定させる一因になっていると捉えられる。ただし、上述したように足元においても散発的に反政府デモが繰り返されるとともに、犯罪や社会不安が増大する事案が発生する状況が続いている。今月にも首都リマで武装集団がバスを銃撃する事件が発生するなど治安を巡る不安が高まっていることを理由に、政府は首都リマを対象に非常事態を宣言する異常事態が常態化している。今後は次期大統領選や上下両院議員選に向けて、反政府デモのほか、武装集団による動きが活発化する可能性も懸念されるなか、政府にとっては如何に安全な形で選挙を迎えられるかが課題になるであろう。

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また、次期大統領選を巡っては、過去に3度(2011年、2016年、2021年)大統領選に出馬するも、いずれも惜敗したケイコ・フジモリ氏の動向に注目が集まっている。同氏は議会第1党であるフエルサ・ポプラル(FP)の党首を務めており、昨年7月に次期大統領選への出馬意向を示しているが、具体的な日程が明らかになったことで党内において次期大統領候補としての待望論が高まることが予想される。その一方で現在の議会は一院制であるものの、昨年の憲法改正を通じて次期選挙で二院制に戻されることが決定しており、同氏の父であるフジモリ元政権下での改憲により一院制とされた状況は変化している。この背景には、強権的な政権運営が繰り返されたことを受けて、議会によるチェック機能の強化や政治安定を求める動きが強まったことが影響している。とはいえ、世論調査においては有力候補とされる面々の間で目立って支持が高い候補は居ない上、前回大統領選では当初は『泡沫候補』とされたカスティジョ氏が第1回投票でトップに立つとともに、決選投票を制したことに鑑みれば、現時点においては選挙の行方は極めて見通しにくい状況にあると捉えられる。

以 上



西濵 徹

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