経験を積んだウクライナ兵は、ゆっくりと慎重に進軍する。とりわけ都市環境ではそうだ。Viktor Fridshon/Global Images Ukraine via Getty Imagesウクライナ兵の訓練にあたったイギリス人将校は、彼らがゆっくりと時間をかけて行動する姿に驚いた。はじめはイギリスのやり方と比べて「少し怠慢なのではないか」と感じられた。しかし、実際に見守るうちに、それが戦術的に理にかなっていることに気が付いたという。
ウクライナ兵の訓練にあたっていた西側の教官の中には、彼らが慎重にゆっくりと行動するのを見て、はじめは「少し怠慢なのではないか」と受け取る者もいた。
しかし、訓練を主導したイギリス軍将校は、彼らが周囲を入念に確認する姿を見て、その行動が戦術的に理にかなっていることに気が付いたという。急ぐことは致命的になりかねない。兵士が仕掛け線や地下壕、あるいは戦場に潜む別の脅威を見落としてしまう恐れがあるからだ。
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ウクライナ兵の迅速な育成を目的とする「インターフレックス作戦」に参加したマグワイア少佐は、階級と姓のみを明かす条件でBusiness Insiderの取材に応じ、ウクライナとイギリスの間には「考え方の違い」があると語った。その違いは、ウクライナが生死を懸けた実戦に直面している点にあるという。
ウクライナは、ロシアとの戦闘経験から、速さが常に最善とは限らず、時には忍耐強く慎重に進むことが生き残る鍵になると学んできた。塹壕の制圧には迅速な行動が求められる一方で、ゆっくりと着実なペースで強い警戒心を要する作戦もある。
市街戦の環境では、ほとんど這うような速度で前進することも、彼らはいとわなかった。建物を制圧し、必要な調整をすべて終え、次に取るべき行動を完全に把握するまで、何時間もその場にとどまるのだ。
「彼らは、ゆっくりと進むことをまったく苦にしない」と、マグワイアは語った。
ウクライナ兵は、ひとつの扉を通過するだけでも長い時間をかける。「立ち止まり、仕掛け線がないかを確認し、あらゆる点を徹底的にチェックする」ためだ。こうした一連の作業を戦術的に安全な形で行えば、「どうしても時間がかかる」のだという。
マグワイアは2024年7月までの約6カ月間、実戦経験を持つウクライナ兵を対象に、指揮官向けの訓練を指導した。ウクライナ兵は「考え得るあらゆる射撃孔やポイント、陣地、地雷を制圧し、適切に対処するまでは、次の建物へ進もうとしなかった」という。さらに、ドローンや砲兵による支援と確実に連携されるまで、行動を起こすこともなかった。
一方で、イギリス側の教官は、「中に突入して一気にやる」という発想に慣れていたため、少しもどかしさを感じていたとマグワイアは振り返る。しかし、ウクライナ兵と対話を重ね、その考え方を学ぶにつれ、認識は変わっていった。「時間をかける」というアプローチが、実は「かなり理にかなったものだ」と受け止めるようになったのだ。
ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まってから3年以上が経過したが、東部ウクライナでの戦闘自体は10年以上続いている。マグワイアから見たウクライナ兵は、イギリス軍と比べて「勝利に何が必要かをより深く理解しており」、さらに「圧倒的な覚悟」を備えている。
「イギリス軍にそれが欠けているという意味ではない」と前置きしたうえで、彼が訓練したウクライナ兵は、「苛烈な戦いが通常」の最前線からそのまま来ており、本能的な攻撃性や戦闘即応性の水準が、長年にわたり高強度の戦闘を経験していないイギリス軍兵士と比べて、明らかに高かったという。
ウクライナが直面している戦争は、ここ数十年にわたりアメリカやヨーロッパ諸国が経験してきた戦争とは異なり、圧倒的なの火力、装甲戦力、そして強力な航空戦力を持つ世界有数の軍事大国を相手に戦っている。西側諸国が長年備えてきた反乱鎮圧型の戦争とは、根本的に性質が異なるのだ。
イギリスが主導する「インターフレックス作戦」では、実戦経験のあるウクライナ兵と新兵の両方が訓練を受けている。Joe Giddens/PA Images via Getty Images
塹壕戦の復活といった従来型の戦闘様式に、ドローンのような新技術が加わったこの大規模な戦争は、西側諸国の軍がこれまで重点を置いてきた戦争像とは大きく異なる。これは、新旧が衝突する苛烈な消耗戦だ。

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