
みなさんは、日本は「福祉国家」だと思いますか?福祉国家だとして、他国と比べて、どのような特徴があると思いますか?いろいろな回答があると思いますが、私が専門とする比較政治学では、次のように考えられています。日本の福祉国家は、規模としては小さい。職域分断的である。高齢者世代への保障が手厚い一方で、現役世代への保障は薄い。ジェンダーが不平等のまま再生産されている。日本の福祉国家がこのような特徴をもつに至った背景には、「中選挙区制」がありました。また不幸にも、90年代の行政改革後の政治競争がこの特徴をより深刻なものにしまったようです。
現在、日本の福祉国家のもとで負担を強いられているのは、現役世代です。とくに現役世代の女性です。家族福祉を前提とする制度のもとで、女性は、自らのキャリアと家族のケアのいずれかを選択することを迫られています。子どもを断念する場合も、多々あります。一方で、男性も長時間労働が強いられ、家族との時間を諦めざるを得ないことがあります。日本社会はこの四半世紀にわたり、少子化、ワークライフバランスの実現といった社会課題に十分な対応ができていません。むしろ事態を悪化させています。
現代に生きる私たちが、日本の将来に関して明るい希望を持てなくなってしまっても当然でしょう。トークラウンジでは、なぜ日本の福祉国家がバイアスをもつものになってしまったのか、そしてまた、一人ひとりが尊重される福祉国家を実現するためには、どのような理念と政策が必要なのか。最新の比較政治学や政治社会学研究の成果を紹介しつつ、検討します。
その際、「新しい福祉国家」を構想する上で重要なのは、「社会的投資」という考え方です。社会的投資は、1990年代半ば以降、アカデミアや政策コミュニティーで注目を集めている概念です。社会政策の目的を、事後的な補償から、事前の準備へと転換する。そのことを通じて、経済社会を活性化させ、人びとがより安全で安心して暮らせるようにする。
このような考え方に基づいて、現役世代、子育て世代、女性、障がいを抱えた方を支援するためには、そしてまた、私たち一人ひとりが尊重される社会を築くためには、どのような福祉国家が必要なのか。参加者のみなさまといっしょに、考えたいと思います。ぜひご参加ください。

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