2026年1月5日 午前7時30分

 【論説】米大リーグ・レッドソックスの吉田正尚選手(32)=福井市出身=は今春、メジャー4年目のシーズンを迎える。「1年間安定した成績と、チームに貢献できるところを求めたい」。昨年12月の福井新聞のインタビューにそう話した。その言葉がどんなプレーとなって表れるのか見守りたい。

 昨季は55試合に出場し、打率2割6分6厘、4本塁打、26打点。2024年10月に受けた右肩手術の影響で開幕から負傷者リスト(IL)入りし、復帰は7月にずれ込んだ。苦しく、悔しかったのだろう。「数字だけ見たら寂しい結果で残念」。シーズン終了直後にはそうも語っている。

 いかに強打者かを示すOPSという指標がある。出塁率と長打率を足したもので、8割あれば一流とされる。メジャー1年目の23年は7割8分3厘をマークしたが、昨季は6割9分5厘にとどまった。入団時に結んだ5年総額9000万ドル(当時のレートで124億円)という大型契約に見合う結果を残せず、現地メディアの間ではトレード候補に取り上げられたこともあった。

 だが、首脳陣の信頼は色あせていない。昨年12月、各球団のフロント陣らが集う会議で、レッドソックスのコーラ監督は吉田選手について熱弁を振るった。「1年目の前半はメジャー屈指の打者だった。今年の終盤はチーム最高の打者だった」と。

 プレーオフ(PO)進出を懸けて激戦が続く中で放ったブルージェイズ戦の本塁打(昨年9月24日)や、4年ぶりのPO進出を決めたタイガース戦(同26日)での3安打1打点の活躍、さらにはヤンキースとのワイルドカードシリーズ第1戦での代打逆転2点打があった。コーラ監督が指す「終盤」での吉田選手の輝きは際立っていた。そんな雄姿にコーラ監督は「(ワールドシリーズ制覇という)われわれの目標達成に不可欠な存在であることに疑いの余地はない」と期待を寄せ続けるのだ。

 プロ野球・オリックス時代から吉田選手は本塁打数などに応じて資金を積み立て、開発途上国で貧困に苦しむ子どもたちの支援に充てている。一昨年のオフにはカンボジアを訪問し、初めて子どもたちと交流した。現実を目の当たりにし、考えることも多かったが、一日一日を楽しく過ごす子どもたちに胸を打たれたという。国内でも「一緒の空間にいることが大事。そこで何かを感じ取ってもらえたら」と、冬場の野球教室に積極参加する。

 子どもたちの笑顔を見るため、より増やすため、そしてチームの目標をかなえるため、昨年の悔しさをバネに飛躍を遂げる一年にしてほしい。

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