公開日時 2026年01月05日 05:00

陸軍兵籍簿を初公開 石垣出身軍人 軍歴詳細に 沖縄県公文書館 国民動員映す第一級史料
公開された陸軍兵籍簿の画像。軍歴が克明に書き足した戦時名簿など多様な資料がある。

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琉球新報朝刊

県出身軍人の召集から除隊までの詳細な軍歴を記録した「陸軍兵籍簿」214冊を保管する県公文書館が、そのうちの1冊(死没者55人分)を琉球新報の閲覧申請に応じて4日までに公開した。各都道府県が遺族などに限って公開しているが、まとまった公開は全国初とみられる。国民の動員状況を映す第一級の史料で、これを機に各地でも公開が進むことが期待される。
陸軍兵籍簿は戦後、都道府県に引き継がれ、生活を支援する援護行政の基礎資料となった。沖縄県分は1972年の日本復帰後に移管。保存期間が満了し、県は96年、複写した上で原本を公文書館に引き渡した。
214冊のうち64冊が死没者、150冊が復員者。1冊90人分程度とされるが、はっきりしない。劣化が激しく、酸性劣化を抑える保存箱に収納し、温度20度、湿度60%に保った書庫で保管。傷みの激しい20冊を修復し、デジタル化も201冊まで進めてきた。
兵籍簿の公開については、県保護・援護課が軍歴資料として、本人や6親等以内の親族などの希望に応じ、写しを交付している。
公文書館にも遺族から閲覧申請はあるが、1冊丸ごとの申請は今回が初めてという。死者の個人情報は原則、保護の対象外。ただし管理規則で、個人や遺族の権利利益を不当に害する恐れのある情報は非公開となる。
その審査に数カ月かかるため、本紙は書類が最も少ない石垣町(現・石垣市)の死没者名「な~わ」の閲覧・複写を8月に申請した。収められた戦時名簿には転属や参加した作戦が詳細に記されている。陸軍病院での病床日誌などもあり、戦場での死への歩みをたどることができる。
新潟大の近藤貴明特任教員(援護行政史)は「兵籍簿の第三者への公開は初めてだろう。まとまって公開されることで兵士一人一人の動員状況や従軍の実態を明らかにできるのではないか」と評価している。(宮沢之祐)
陸軍兵籍簿 所属部隊の移動経過、階級昇進などを登記した「軍人の戸籍」に当たる陸軍兵籍や、戦地で所属部隊が履歴を記録した陸軍戦時名簿の総称。戦況で失われたほか、一部は敗戦時に焼却された。戦後、軍人恩給の算定や叙位叙勲の基礎資料として行政利用されてきた。兵籍・戦時名簿の保管総数は約730万人分とされる。

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