「エアコンの2027年問題」の影響で今年の夏以降に家庭用の低価格帯のエアコンが品薄、買えないという事態に陥るかもしれない。2027年問題がなぜ前年の2026年に影響を及ぼすのか、私たちの暮らしにどのような影響があるのか、識者に聞いた。(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部/監修:安蔵靖志)

2027年度から省エネ基準が厳格化され、現行の低価格エアコンが販売困難に
エアコンの最低価格が数万円上がる可能性がある
省エネ基準を満たしたエアコンは初期費用がかかるが、長期的にみるとお得

安蔵靖志

「エアコンの2027年問題」とは何か?

2027年4月以降、省エネ基準が引き上げられ、基準に満たないエアコンの製造・販売ができなくなる。結果として現在販売されている低価格帯のエアコンがなくなり、エアコンの価格が全体的に「3割以上高くなる可能性がある」(安蔵氏)ため、エアコン購入時に家計の負担が増えるという問題だ。

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このため、今年は低価格帯のエアコンに対する駆け込み需要が発生する可能性が高まるという。安蔵氏は低価格帯のエアコンの販売について「27年4月を過ぎたらもう遅いので、今年の夏前、夏ごろがリミット」と見通す。
また駆け込み需要の発生に伴って、夏場は取り付け工事や修理の待ちが長期化するおそれもある。「ゴールデンウィーク前後までには購入したほうがいいでしょう」(安蔵氏)。

2027年以降は、エアコンの価格が上がるだけではない。

エアコンの部品保有期間は製造から9年。今後は時間の経過とともに部品がなくなり修理が難しくなる可能性がある。これまでは「壊れてもまた安いのに買い替えたらいい」が通用したが、高額な商品への買い替えを余儀なくされるのだ。
生活に余裕がない場合、エアコンが買えない、直せないという未来がやってくるかもしれない。

そもそもなぜ、2027年問題は引き起こされるのだろうか。

1998年に改正された省エネ法に基づいて設けられた「トップランナー制度」。乗用車や照明器具、テレビなどさまざまな製品について、市場で最も省エネ性能が高い製品(トップランナー)を基準に置いて、エネルギー消費効率の目標達成を促し、効率の表示を求める制度だ。
エアコンもこの対象になっており、家庭用エアコンでは2027年度からより高い省エネ基準(APF)を求められるようになっているのだ。
安蔵氏は「温暖化は喫緊の課題なので対策はやらざるを得ない。政府だけではなくメーカーも協力せざるを得ないところまできている」と解説している。

APF(Annual Performance Factor)は「通年エネルギー消費効率」と言われる指標。エアコンの省エネ性能を示す基準で、消費電力1kW当たりの冷暖房の能力を示している。数値が高いほど性能がよいとされる。

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家庭用エアコンのAPFは現行が4.9~5.8なのに対し、27年度からは6.1~6.6と13.8%以上の改善を求められている。

「リビング用だけかなり緩く設定されていた」(安蔵氏)
特に厳しい基準を突きつけられたのはリビング用として販売されることが多い14畳タイプ(冷房能力4.0kW)。34.7%の改善を要するため、2027年度からは最低価格が大幅に値上げされる可能性もある。

一方でAPFが高くなることでエアコンの消費電力量は大きく下がる。本体価格は上がるが、買い替えるまでのスパンでみると安くなるという。

安蔵氏によると6畳用の2.2kWのエアコンの場合、現行のAPF5.8の年間の電気代は2万2240円。新基準のAPF6.6では1万9544円で、約2700円お得になる。
より高い改善率を求められている14畳のリビング用のエアコンだとどうなるだろうか。

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本体価格ではAPFが高いエアコンのほうが8万5000円高いが、年間の電気代では約1万3000円安くなる。安蔵氏は「エアコンは壊れない限り10年ぐらいは使い続けるもの。10年間というスパンでみるとかなり大きな差になる」としている。実際に本体価格と10年間の電気代を足した総コストを見比べると、10年後にはAPFが高いエアコンのほうが安くなっている。すぐエアコンが利いて快適に暮らせる上に、金銭面でも元が取れるのはうれしいポイントだ。

低価格帯のエアコンにするか、新基準に対応したエアコンにするかを考える以前に、「本当に今、買い替える必要があるのか」と悩む人もいるだろう。
まずは、ご自宅のエアコンの状況を診断してみよう。

診断結果はどうだっただろうか。もし買い替えたほうがいいと出た場合、予算に悩む人もいるかもしれない。
そういった人は国や自治体の補助金を利用できないか検討するのも手だ。国は「子育てグリーン住宅支援事業」で新築やリフォームの際に対象となるエアコンを設置するケースに補助金を交付している。また、一部の地方自治体では省エネ機器の導入や高齢者の熱中症対策に対して補助金を出している。
利用できそうな制度がないかを調べたほうがよいだろう。

迫りくるエアコンの2027年問題。実はユーザーにもメリットがあるかもしれない。
APFが高い高性能なエアコンが買いやすくなる可能性があるというのだ。
安蔵氏によると現在の高性能なエアコンについて、人感センサーやフィルターの自動お掃除などの機能を搭載させて、付加価値をつけることでより高く販売する手法をとっているという。
安蔵氏は「低価格帯のエアコンがなくなれば、高性能なエアコンが最低価格のエアコンになる。その分、機能を落として、価格はちょっと安くする可能性がある」と指摘。「省エネ性能の高いエアコンをよりお得に買えるようになるとポジディブに捉えることもできますね」と話した。

「エアコンの2027年問題」は、私たち消費者が家計と地球環境の両方にとって「賢い選択」は何かを考える、良い機会といえそうだ。

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