NECパーソナルコンピュータ(NECPC)は12月5日、保守サービス拠点である「群馬事業場」(群馬県太田市)を報道陣向けに公開した。PCの故障による業務停止(ダウンタイム)を極小化する「1日修理」や100万個に及ぶ部品在庫を抱え実現する修理の内製化など、ユーザーを待たせないためのスピードとそれを実現する仕組みに迫る。

NECパーソナルコンピュータの「群馬事業場」(群馬県太田市)
生産拠点から「サポートの要」へ
群馬事業場は、1984年に生産拠点として設立。かつては「PC-98シリーズ」などの開発・生産を担っていたが、2002年に修理事業へと転換し、以降、約20年にわたり修理事業を主軸に展開している。修理(リペア)センターやコールセンター、保守部品調達やライフサイクルマネジメント(LCM)サービスの拠点として機能しており、2025年4月からは、法人向けPCビジネスのサポートも含めた現在の体制になった。
NECPCでは、通常1~5年とされるPCの保証期間を最長7年まで延長できる「プレミアム延長保証サービス」を用意。これは通常保証を拡張したもので、最長7年(一部対象外の機種あり)までの引き取り修理に対応する。
NECPC サービスセールス事業本部 ポートフォリオイネーブルメントの佐々木隆氏は「3年、5年までの保証は他社PCメーカーでも一般的だと思うが、さらに7年という長期の修理に対応するのがNECPCならではのポイント。加えて、修理から発送まで最短1日で完了する『1日修理』を実施しているのも私たちの強み」と引き取り修理サービスの特徴を挙げる。
1日修理は、ユーザーがサービスセンターに連絡すると、引き取りの手配が開始される流れ。ユーザー側で梱包(こんぽう)したり、緩衝材を用意したりする必要はなく、配送会社にPCを渡すだけで完了する。
現在、PCの着荷から出荷までを1日でこなす1日修理は、目標値の95%を継続して達成しているとのこと。加えて、通常保証では対象外となる、水こぼし、落下、落雷などの事故による破損や、盗難(代替機の提供)にも対応する「アクシデント・ダメージ・プロテクション(ADP)」のオプションも用意する。
部品配膳は13分以内、開発へのフィードバックも
1日修理を実現できるのは、「13分以内」を実現しているリペアセンターでの部品配膳や、当日16時までの部品注文を即日配送できる物流網によるもの。センター内ではAIも積極的に活用する。
部品配膳は、修理担当者が必要な部品を要求してから、13分以内に届くというもの。13分という時間は、1日修理を実現するために割り出した時間だという。敷地面積約7万5000平方mの群馬事業場内では、約1万種類以上、100万個以上の部品を保管する。最長7年の延長保証に対応するため、パーツメーカーの製造終了後も保証分を買いだめするなど、数年後を見越し、欠品しないよう細心の注意を払う。

サービス事業本部 フィールドサービス グループマネージャーの栗原一男氏
「『どうすれば早く修理できるか』『簡単に修理できるか』という保守性の観点から開発・生産にフィードバックし、新モデルが登場する時に製品に反映させている。開発・生産部門と連携しながらフレキシブルなオペレーションを目指している」(サービス事業本部 フィールドサービス グループマネージャーの栗原一男氏)と連携体制を強調。こうした取り組みにより、事業所内では部品在庫の「差異ゼロ」の状態がずっと続いているという。
物流網には、トラックヤードを、午前は開梱や検品、修理センターへと届ける「着荷」に、午後は清掃や梱包、ユーザーへの返却作業を担う「出荷」に割り振り対応する。群馬事業場では、着荷・出荷エリアに限らず、全ての作業を天井のカメラで記録しており、預かった製品や製品の状態、周辺機器などを保存する。
AI活用で故障診断・予兆検知を高度化

NECPC 執行役員 サービス事業本部長の小林大地氏
AIは、主にPCの修理ラインにおける故障診断と品質管理における不具合予兆の検出に活用している。「コンセプト自体はかなり前から考えていたが、本格運用を始めたのは2025年2月」(NECPC 執行役員 サービス事業本部長の小林大地氏)と1年経たずに実用化へとつなげた。
中でも故障診断は、修理時間を左右する重要なポイント。「故障箇所の特定にはPCの知識や理解、修理経験など高いスキルが必要になり、人材育成に時間がかかっていた」(PC修理担当者)という課題に対し、該当部分にAIを活用し、効率化する。
取材時のデモでは、10~15秒程度で診断結果が導き出された。その結果を受け、修理担当者は該当する部品を要求し、部品交換と動作確認をする流れだ。AIの導入により、修理における立ち上がりも早くなったという。
不具合の予兆検出では、従来、修理が完了してから分析していた修理実績データを、修理を受け付けた時点で分析することで早期発見につなげる。具体的には、ユーザーからの申告をAIで自動分類し、その後、時系列を解析するAIを使い故障が増える前の予兆を検出。これにより、特定のロットに不具合が生じた場合や「Windows」のアップデートにより突然トラブルが増えた場合など、原因を早く認知することで対応策がとれるとしている。
キッティングから廃棄まで担うLCMサービス
修理の速度と精度を極める一方で、群馬事業場のもう一つの柱となっているのがLCMサービスだ。従来、企業のIT部門が担っていた部分だが、PC導入時のデータコピーや個別設定、管理ラベルの貼り付けまで、作業は多岐にわたり、工数も多い。IT部門の業務負担増を課題に挙げる企業も多くなってきているという。

NECPC サービスセールス事業本部 ポートフォリオイネーブルメントの佐々木隆氏
群馬事業場では、「単なる修理だけでなく、お客さまの事業を支援するソリューションを提供する」(サービスセールス事業本部 ポートフォリオイネーブルメントの佐々木隆氏)とし、PC導入時のキッティング作業から保守やセキュリティといった運用、リサイクルやデータ消去までを担う廃棄など、ライフサイクル全体をサポートする。
キッティング作業におけるマスターコピーでは、独自のツールを使用し、素早い対応を実現しているほか、管理ラベルの貼り付けでは、複数人で作業しても同じ場所に貼り付けができるよう専用の治具を用意。付属品の同梱では、トレイを使用して定位置を決めておくことで、間違いのない作業ができるようにしている。
さらに廃棄フェーズでは、ソフトウェアによる消去と物理破壊の2つを用意。ここでも天井に取り付けたカメラを活用することで、データ消去が終了した状態の画面を撮影し、データ保存・管理をすることで、トレーサビリティーや作業の抜け漏れ防止を徹底している。
「修理以外のサービス」への進化
小林氏は「群馬事業場には、生産や開発のノウハウを持つ人材が多くいる。そうした『ものづくり』の知見を生かしながら引き取り修理などのマネジメントしているのが強み。お客さまの機器をお預かりして代替機をお貸しし、修理完了後に交換する『修理以外のサービス』への取り組みも注目してほしい」と注目ポイントを挙げる。
代替機は、修理依頼があった段階でユーザーに先出しして送ることで、ダウンタイムを最小限に抑えるというもの。ちなみに配送手段は陸送に加え、必要に応じて航空便も利用することで、物理的な距離も短くしているという。
群馬事業場は、壊れたPCを修理する場としてではなく、壊れる前に手を打つ、運用の手間を減らす存在へと進化を遂げている。ビジネスを止めないための仕組みを整え、働く人々に快適なPC環境を届け、仕事を支援している。

工場内における標準的な修理の流れ。


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