イタリアの競争取締当局であるAutorità Garante della Concorrenza e del Mercato(AGCM)が、AppleがApp Storeにおける支配的な地位を乱用したとして、約9863万ユーロ(約180億円)の制裁金を科したと発表しました。当局は、EU機能条約(TFEU)第102条に基づき、iOSユーザー向けのアプリ配信プラットフォーム市場において、Appleが「超支配的」な地位を保持していると認定しています。

AGCM – The Italian Competition Authority fines Apple over 98 million euro for abuse of a dominant position
https://en.agcm.it/en/media/press-releases/2025/12/A561


Apple Hit With Supersized Fine in Italy Over an iPhone Privacy Feature – MacRumors
https://www.macrumors.com/2025/12/22/italy-fines-apple-over-app-tracking-transparency/

App Tracking Transparency, $115 million fine, Italy
https://appleinsider.com/articles/25/12/22/italy-fines-apple-115-million-over-app-tracking-transparency

AGCMは2023年5月から調査を行った上で、Appleが2021年4月のiOS 14.5から導入したApp Tracking Transparency(ATT)が競争を制限する性質を持っていると主張しています。

ATTは、アプリがパーソナライズ広告のためにユーザーの活動を追跡する際、事前に許可を得ることを義務付ける機能です。しかし、AGCMは、このATTがサードパーティーの開発者に対して「二重の同意」を強いる結果になっていると指摘しました。これは、EUの一般データ保護規則(GDPR)に基づく同意プロンプトに加え、Apple独自のATTにおいても同意を得る必要があり、これが開発者や広告主にとって過度な負担となり、ビジネスモデルを損なう要因となっているとAGCMは判断しています。

AGCMは、「Appleが自ら掲げるデータ保護の目的を達成するために、より競争を制限しない方法をとることも可能だった」と批判し、「一段階の同意プロセスで同等のプライバシー保護を確保できたはずであり、ATTに対応させる現行の仕様は開発者や広告主に対して不公平で有害な負担を与えている」と結論付けました。さらに、このATTがAppleにとって経済的な利益を生む可能性があるとも主張しています。


これに対し、Appleは当局の決定に強く反対しており、控訴する方針を海外メディアへの声明で明らかにしました。Apple側は、「自社のアプリがATTのポップアップを表示しないのは、そもそもユーザーの活動を他のアプリやウェブサイトにわたって追跡していないからだ」と主張し、「ATTはユーザーに重要なプライバシー保護を提供するものであり、AGCMはその価値を軽視している」と反論しました

控訴プロセスが終了するまでは制裁金の支払いが猶予される見込みですが、規制の波は他国にも広がっています。ポーランドでも2025年11月からATTに関する同様の調査が継続して行われており、Appleのプライバシー機能が競争環境に与える影響については、欧州全域で厳しい監視の目が向けられています。Appleは、将来的にEU内でのATT提供を停止せざるを得なくなる可能性についても言及しました。

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