金融事業を通じて、県内の農業従事者らを支えるJA神奈川県信用農業協同組合連合会(神奈川県信連、横浜市中区)。「農業と地域の未来を創る」を組織の基本的使命とし、自らの成長とともに経済、社会、環境の持続的な発展を図る「サステナブル経営」を掲げている。今年は新たな中期経営計画がスタート。ステークホルダーとの関係をより深めようとしている神奈川県信連の想(おも)いや多様な取り組みを5回にわたって紹介する。

 「ニンジン3本はいくらになるでしょうか」。講師役の職員の問いかけに、子どもたちが次々と手を挙げて元気な声で応じる。

 神奈川県信用農業協同組合連合会(JA神奈川県信連、横浜市中区)が地域で手がける金融教育。小学生にとっても普段から親しみのある食材だけに、お金の仕組みを学ぶ場に用いてもやはり食いつきがいい。

県立高校で今年行われた金融教育の様子

 今年7月、JAあつぎが毎年開催する小学生向け夏休みの自由研究イベントと合同で4回に分けて開き、計80人の児童が参加。「活気があって、とてもいい雰囲気で行うことができた」と、講師を務めたJA神奈川県信連JAバンク企画推進部の半妙朝陽さんはほほ笑みながら振り返る。

 対象の世代が上がると学びはいよいよ本格的だ。高校生向けには、農業経営を疑似体験できるシミュレーションゲームを活用する。

 育てる野菜や肥料、農具の借り入れなどを選び、資金繰りを考えながら売り上げ増を目指していく。金融教育に取り組む企業・団体は他にも多いが、農業専門の金融機関ならではの独自性がここでも垣間見える。

 乗り出したのは、高校の家庭科に金融教育が必修化された2022年。学校農業クラブの支援などを通じて関係が深い農業系県立高校を皮切りに、対象を徐々に広げている。

 「NISA(少額投資非課税制度)の全世代への拡大が検討されていますし、今や金融リテラシーを身に付けるのは早いに越したことはない」と、同じくJAバンク企画推進部で取り組みを進める若本崚さん。

 25年度は出前授業として県立高校と厚木市立小学校で実施したほか、地域イベントの一環として小学生向けに2回行った。年明けには高校2校での出前授業も予定している。

 教える内容は、お金の価値や、お小遣いの計画的な使い方といった優しいものから、投資や老後の備えまで幅広い。商業系高校には株の仕組みを教えるなどオーダーメイドだ。

 ただ、金融教育の場の全てで共通して伝えているのが「自分が幸せになるためには今何ができるか、長期的な視点で考えてほしいということ」と若本さん。「手間暇をかけたからこそ立派に育つ農作物を例に挙げるなどし、こつこつやる『自己投資』の大切さを伝えています」と続ける。

 金融教育は将来を考える機会に結び付いている。高校生からは「自分が将来何をしたら良いか考えるこつを知ることができた」「将来のことと、今のことをつなげて考えられるようになった」という感想が寄せられた。まさに、自己投資の大切さを伝えるというJA神奈川県信連の金融教育の特長が感じられる言葉だ。

 金融教育を通じて子どもの未来を支え、ひいては「サステナブル経営」の重要課題(マテリアリティ)の一つ、「地域社会の活性化」につなげようとしているJA神奈川県信連。若本さんは「私たちは農業だけでなく、地域密着型のサービスを提供する地域専門の金融機関でもあります。その両面をこれからも大切に地域社会へ貢献していきたい」と話している。

(PR)企画・制作=神奈川新聞社クロスメディア営業局

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