掲載日

2025年12月23日

モロッコは、アフリカの伝統衣装のレッドカーペットと化したのか?2025年のアフリカネイションズカップ(CAN)の開催国である同国では、ユニフォームにとどまらず、多くの代表チームが伝統衣装で姿を見せた。さらに、Daily PaperやPumaといったファッションブランドもアフリカ文化に着想を得たコラボレーションを展開し、このイベントを彩っている。

アディダスとアルテ・アントワープが、大会開催国モロッコのカラーを取り入れたコラボレーションを発表。アディダスとアルテ・アントワープが、大会開催国モロッコのカラーを取り入れたコラボレーションを発表。 – adidas/Arte Antwerp

ナイジェリアのスーパーイーグルスは刺繍入りのグリーンのカフタンに合わせた帽子を、マリのイーグルスは黒×ゴールド、あるいは青×白のボゴランを、ジンバブエのウォリアーズはカラフルなディテールが効いたスーツを披露した。すべてのクリエイターの名前が明かされたわけではないものの、その評判はSNSで軒並み高い。2年に一度、熱狂を呼ぶCANは、アフリカの職人技と大陸のファッションに大きなスポットライトを当てている。

職人技と文化に脚光

2024年のアフリカ王者という肩書きに加え、きらびやかな伝統衣装でも大きな注目を集めているのがコートジボワールだ。エレファンツの愛称で親しまれる選手たちは、白と金の糸で表したアディンクラ模様(アカン民族の遺産に由来するシンボル)を施したキタ織のパーニュで仕立てたトレンチコートを、白のシャツとパンツに合わせてモロッコ入りした。この装いを手がけたのは、2017年からコートジボワールのアビジャンを拠点にするコートジボワール系レバノン人デザイナー、エリー・クアメ。2006年に誕生した彼の「プレタクチュール」ブランドは、アフリカ・ファッションの多様性を称え、それらをラグジュアリーへと昇華させている。

エリー・クアメが手がけた装いエリー・クアメが手がけた装い – Fédération Ivoirienne de Football

もう一人、注目を集めたのがコンゴ民主共和国(RDC)代表の衣装を手がけたアルヴィン・ジュニア・マックだ。RDCに生まれ、幼少期にパリへ渡った彼は、現地の職人を起用してRDCで直接生産を実施。RDC代表を象徴するヒョウ柄を大胆にあしらった彫刻的なジャケットが完成し、サステナブルな既製服レーベルである自社ブランド「JmakxParis」のロゴが入っている。

各ブランドがこのイベントに乗り出す

最後に、ブルキナファソ代表(愛称:エタロン)は、ブルキナベのブランド、フリーデザインに衣装制作を依頼した。デザイナーのAhmed Ouedraogoは、国旗の色である緑と赤のストライプを配した白いチュニックを選び、襟元と胸元にはシンボルを施している。装いは白いパンツと帽子で完成する。 

Daily Paperはマラケシュで存在感を示すDaily Paperはマラケシュで存在感を示す – Daily Paper

グローバルブランドもまた、このイベントで存在感を放った。Daily Paperは、モロッコ人アーティストのHassan Hajjaj(ハッサン・ハッジャージュ)のプロジェクト「Kech United(ケチ・ユナイテッド)」を軸にコラボレーションを展開。アフリカネイションズカップ期間中にマラケシュで行われるこの文化プログラムは、サッカー、アート、ファッション、音楽を横断し、Daily Paperはアフリカ文化や世界の若者コミュニティとの結びつきを強調する一連の主要イベントを披露している。

ストリートウェアとスポーツがディアスポラを称える

今回のCANに合わせ、アルテ・アントワープとアディダスはモロッコ代表“アトラスライオンズ”のカラーに染めた共同コレクションを発表した。開幕戦のコモロ戦前には、代表選手2人が着用。コレクションには、グリーンのスリーストライプとレッドのアディダスおよびアルテのロゴを配したベージュのニットプルオーバー、白のパイピングを効かせた赤のスウェットシャツ、同系色のディテールを施した赤・白・黒の各種トップス、そして黒のレザージャケットが含まれている。 

プーマはCAN 2025の周辺でもひときわ積極的に展開プーマはCAN 2025の周辺でもひときわ積極的に展開 – Izudin Yusuf

最後に、ドイツのブランド、プーマはアフリカ最大のサッカーの祭典の周辺で多角的な展開を見せている。CANの公式試合球サプライヤーとして、モロッコを想起させる星と、同国のモザイクアートであるゼリージュに由来する幾何学模様を配した「イトリ」モデルを提供。また、オリンピック・ド・マルセイユとのコラボレーションでは、同地に暮らすアフリカ系ディアスポラのうち、セネガル、コモロ、アルジェリアなど2025年大会に出場するルーツ国のカラーをまとったユニフォームを多数リリースした。

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