


今回のコラムは、2年前まで同社の海外営業を担っていたカナダ・ケベック出身のブノア・シャンパーニュ氏に協力をいただいた。シャンパーニュ氏は現在ケベックに拠点を移し、日本酒普及会社を設立。フランス語・英語に加え、ほぼ完璧な日本語を操りながら、カナダで日本酒文化の魅力を伝える活動を続けている。

本仕込 浦霞


浦霞醸造元・株式会社佐浦
https://www.urakasumi.com/
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Toggle出会いときっかけ浦霞の味と哲学カナダでの反響、ケベックでのトレンド楽しみ方・ペアリング伝統と革新、そして未来へ【お知らせ】新年テイスティングワークショップ出会いときっかけ
オンタリオ州で日本酒ビジネスを始めて数年経った2003年頃。東北といえば浦霞、と強く惹かれ、奥の松酒造の遊佐社長のご紹介でご縁をいただきました。当時はオンタリオでの日本酒普及が難しく、すぐには進展しませんでしたが、2011年の東日本大震災後、LCBOが日本酒の輸入に門戸を開いたことを機に、何度も蔵を訪ね、厳冬の中での酒造りを見学しながら少しずつ信頼を築き、現在に至っています。
浦霞の味と哲学

浦霞の味わいは、華やかでありながら、穏やかで落ち着いた印象で、まるで季節の移ろいをそっと伝える風のように、飲む人の感覚にやさしく寄り添います。口に含むと柔らかく上品な旨みが広がり、余韻にはキレがありながらもふくらみがあり、料理の素材の味を引き立ててくれます。その絶妙なバランス感覚は、まさに日本料理の精神と調和するものです。
こうした味わいには、「控えめな奥ゆかしさ」「引き算の美学」「調和を尊ぶ心」といった、日本の美意識にもなぞらえることができると思います。
カナダでの反響、ケベックでのトレンド

甘く香り高く、重厚感のある日本酒が人気を集めている昨今ですが、実はカナダでは、少しずつ新しい流れが生まれています。
最近では、「水を感じられる日本酒」を好む方が増えてきています。その変化は、イベントでのお客様の反応や、LCBO店舗で選ばれる銘柄にも表れています。
そして「本仕込 浦霞」は、その良い例と言えるでしょう。キレのある味わいに、やわらかな口当たり。香りは控えめで上品です。冷やしても、燗にしてもそれぞれの表情があり、幅広い楽しみ方ができます。どんな料理にも自然に寄り添い、決して邪魔をしない、その穏やかで奥行きのある味わいが、レストランでも多くの方に選ばれている理由です。
ケベック州では、興味深い日本酒の傾向が見られます。ビールがお好きな方には、しっかりとした旨味と厚みのある純米酒が好まれ、一方でワインを楽しまれる方には、フルーティーで華やかな吟醸香の日本酒が人気です。
その中でも、「純米酒 浦霞」はビール通の方々から支持を集め、穏やかな吟醸香が魅力の「純米吟醸 浦霞 No.12」は、ワイン愛好家の方々に選ばれています。この「純米吟醸 浦霞 No.12」は、浦霞吟醸醪から分離された“きょうかい12号酵母”で仕込まれたもので、浦霞発祥の酵母によって生まれた、蔵の個性と伝統を感じられる一本です。
楽しみ方・ペアリング
純米吟醸 浦霞 No.12
豊かな海の幸に育まれてきた浦霞の酒は、魚介類との相性が本当に抜群です。なかでも純米酒や純米吟醸酒は、素材そのものの味わいを引き立てる繊細な料理とよく合います。浦霞の地元、松島湾といえば牡蠣の名産地として知られていますが、実はカナダ産の牡蠣やロブスターなどのシーフードとの相性も素晴らしいんです。「純米吟醸 浦霞 No.12」は、レモンとほんの少しの塩唐辛子を添えた牡蠣や、旬の海鞘(ほや)と合わせると、驚くほど調和します。
木桶仕込み生酛 純米酒 浦霞 No.12
浦霞の魅力は、和食だけにとどまらないことです。洋食や中華、そしてフュージョン料理とも自然に寄り添い、食卓にリラックスした雰囲気をもたらしてくれます。たとえば「本仕込 浦霞」や「純米酒 浦霞」は、料理の温度に合わせて提供温度を変えてみるのがおすすめです。白身魚やお刺身には冷酒、野菜サラダやアボカドには常温を、そして天麩羅や鍋料理、脂のある料理や赤身肉、焼いたキノコなどにはぬる燗がよく合います。
また、カナダでは日本酒とチーズのペアリングイベントも行われています。パルメザンやブルー、カンタル、スイスチーズなどと組み合わせることで、チーズの香りをやわらげ、旨味をより引き出してくれるんです。特に旨味の強い純米酒はチーズ好きの方々にも大変好評です。ご家庭でも、海苔とチーズを組み合わせた簡単な前菜で、日本酒との新しい出会いを楽しんでみてはいかがでしょうか。

木桶仕込み生酛 純米酒 浦霞 12(LCBO店舗リスト)
https://www.lcbo.com/en/kioke-kimoto-junmai-12-kobo-sake-40142
伝統と革新、そして未来へ
MIGAKI-ICHIGO X 浦霞 純米大吟醸仕込み
浦霞・佐浦は世界25ヶ国に輸出されている大手酒造蔵で、カナダでは、レストランだけでなく、家飲みにも普及出来るようオンタリオ州LCBO店舗やケベック州SAQ店舗での純米酒や本醸造酒の販売強化に力を入れている一方、シャンパン技法の瓶内二次発酵浦霞No.12スパークリング シルバーラベルや一粒千円と言われるミガキイチゴを山田錦純米大吟醸 浦霞に漬け込んだ、なんとも華やかで高貴なリキュールなど高品質、高価格の日本酒にも力を入れ、蔵人の研鑽の証しになっており、LCBO店舗やLCBOのオンラインショップでも取り扱われています。

MIGAKI-ICHIGO X 浦霞 純米大吟醸仕込み
https://www.lcbo.com/en/urakasumi-junmai-daiginjo-x-migaki-ichigo-sake-35326?srsltid=AfmBOoqQuJRJsnWEvpzIeLUQMA1YgUQlmvnKHGnIWpO919HlRS_ErbAO
【お知らせ】新年テイスティングワークショップ

12月30日カナダ日本文化会館(JCCC)
日本酒で祝う新年の門出。厳選された日本酒3種類を軽食とともに味わいながら、その味わいや背景にある物語、日本酒文化の魅力を体験できます。
https://www.jccc.on.ca/ja/node/1517

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