
現代では近親相姦(そうかん)が重大なタブーとして扱われていますが、遺跡からは古代の人々が近親相姦を行っていた証拠が見つかっています。新たに、イタリア南部の遺跡で発掘された中期青銅器時代の人骨を分析した研究により、当時の父娘間で近親相姦が行なわれていたことが判明しました。
Archaeogenetics reconstructs demography and extreme parental consanguinity in a Bronze Age community from Southern Italy | Communications Biology
https://www.nature.com/articles/s42003-025-09194-2

Bronze Age DNA from Calabria reveals a distinct mountain community
https://www.mpg.de/25882013/bronze-age-dna-from-calabria-reveals-a-distinct-mountain-community
DNA analysis of 3,700-year-old skeleton from Italy reveals first evidence of father-daughter incest | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/oldest-known-evidence-of-father-daughter-incest-found-in-3-700-year-old-bones-in-italy
イタリア南部のカラブリア州は、イタリアの国土をブーツにたとえた際にちょうど「ブーツのつま先」に位置する州であり、古代からさまざまな人々が移住してきた土地でもあります。今回、イタリアやドイツの研究者からなる研究チームは、カラブリア州にあるGrotta della Monaca遺跡で発掘された人骨のDNAを分析しました。
Grotta della Monaca遺跡は、海抜600mを超える石灰岩の尾根に位置する中期青銅器時代の洞窟遺跡であり、紀元前1780~1380年にかけて埋葬地として使われていたことから、多数の人骨が発見されています。
研究チームが断片化された23人分の骨のDNAを分析したところ、このうち10人が女性、8人が男性であることが確認されました。人骨のミトコンドリアDNAと父系のY染色体DNAのハプロタイプも多様であり、この集団は多様な遺伝的背景を持つ人々で構成されていたことがわかりました。
また、Grotta della Monata遺跡の人々は成人の乳糖不耐性に関する遺伝子を持っていたにもかかわらず、牧畜を営んで牛乳や乳製品を摂取していたことが示唆されています。これは、厳しい山岳環境で繁栄するための文化的な適応が、進化的な適応に先行し得ることを示すものだと指摘されています。

埋葬地内での遺伝的関係を調査したところ、「親と子ども」のペアが2組確認されました。このうち、いずれも30歳以上の成人女性である組は単純な「母親と娘」でしたが、成人男性と思春期前の少年からなるもう1組は「父親と、近親相姦によって生まれた息子」だったことが判明しました。
研究チームは今回の研究で、DNAにおけるホモ接合連続領域(runs of homozygosity、ROH)を分析しました。ROHは親から子へと受け継がれる類似した遺伝物質が連続する領域のことで、人間は生物学的な近親以外と交配すると遺伝子が混ざり合ってROHの値が低くなり、ROHの値が高い場合は近親交配と相関関係があります。
Grotta della Monata遺跡に埋葬された人のほとんどは、両親が過去6~10世代離れた遠縁であることを示唆するROHの値を持っていました。しかし、今回見つかった少年は、これまでに古代のゲノムデータセットで報告されてきた中で最も高いROH値を持っていたと報告されています。
さらなる調査の結果、近親相姦によって生まれた少年は、「その父親と娘の間にできた子ども」であることが確認されました。近親相姦では子孫に遺伝的疾患が生じる確率が高くなりますが、少年の遺伝子からは、まれな遺伝子疾患の証拠は見つかりませんでした。なお、少年の母親にあたる人骨は発見されていません。
以下の図で、「GMO022」が近親相姦の親子における父親で、「GMO007」がその息子、黒い丸が人骨の見つかっていない未知の女性となります。

研究チームは、中期青銅器時代のイタリアで父娘間の息子が生まれていたという発見は、考古学的記録に残っている中で最も古く、注目に値する珍しいものだと指摘。論文の共著者である考古遺伝学者のアリッサ・ミットニク氏は、「今回見つかった特異な事例は、この小さなコミュニティにおける文化的に特有の行動を示唆している可能性もありますが、その意義は結局のところ不確かです」と述べ、近親婚が一般的だったのかどうかはわからないと説明しました。
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