情報BOX:EUのガソリン車販売禁止撤回、柔軟運用で35年以降も容認

12月16日、独ベルリンで撮影。 REUTERS/Axel Schmidt

[16日 ロイター] – 欧州連合(EU)欧州委員会は16日、域内でエンジン車の新車販売を2035年以降禁止する目標を事実上撤回することを正式に提案した。加盟国のドイツ、イタリアや、主要自動車メーカーの圧力に屈した形だ。

環境団体や電気自動車(EV)専業メーカーらは当初目標を維持するよう働きかけていたが、プラグインハイブリッド車(PHEV)や二酸化酸素(CO2)中立燃料など過渡的な技術を認めて目標が修正された。

今回の提案では、各メーカーは走行中のCO2排出量を新車全体で21年と比べて平均90%削減するよう求められ、この達成を条件に35年以降もエンジン車を販売できる「柔軟性」が与えられる。

提案の主な内容は以下の通り。

<柔軟性>

各メーカーはこの提案の下で35年以降もPHEVやレンジエクステンダー型EVの販売が可能となる。ただCO2排出量を100%削減できない場合は、その不足分を穴埋めしなければならない。

使用済み食用油などの廃棄物から製造される先進的なバイオ燃料を含むCO2中立燃料や、製造時のCO2排出を大幅に減らした低炭素鉄鋼も、排出量の計算に組み込まれる。つまりEU域内で製造された低炭素の「グリーンスチール」を使用して車を生産するメーカーは、排出量をさらに削減できる。

こうした「柔軟性」を利用するメーカーは、テスラやポールスターのようなEV専業ブランドと排出量をプールして目標を達成することはできない。

<法人向け車両>

欧州では新車販売の約60%を法人向けが占めており、この分野は加盟国の1人当たり国内総生産(GDP)に基づく拘束力のある電動化目標に直面する。ただ従業員250人未満かつ売上高5000万ユーロ未満の中小企業は適用を免除される。

加盟国は、域内で製造されたクリーン自動車だけに財政支援を提供する。これは現地調達・現地生産を推奨してきたフランスの勝利だ。

法人向け車両の電動化は、中古EV市場形成にも寄与する可能性がある。レンタカー会社は通常1年間、リース会社は約3年間車両を保有するためだ。

35年のゼロエミッション車の国別市場シェア目標は、ブルガリアが32%、多くのより豊かな国は100%と幅広い範囲に設定されている。

<小型EV>

欧州委は、日本の軽自動車に似た全長4.2メートル未満の小型EVという新たなカテゴリーを創出する。

これらの車両は34年まで排出量目標で「スーパークレジット」の対象となり、販売1台につき1.3倍で計算される。つまり小型EV10台の販売は13台とみなされる。

ルノーとステランティスは、コスト削減と手頃な価格設定につながるとして小型EVのカテゴリー創設をEUに働きかけていた。

<商用車>

バンなどの商用車は30年までに達成すべき排出量削減率を、以前の50%から40%に引き下げられる。また各メーカーは、30年から32年の平均で基準を満たすことが認められ、より柔軟性が高まる。

<電池ブースター>

今回の提案には、新たな電池ブースターパックの開発も含まれ、欧州がギガファクトリー拡大や中国との競争を進める中で、財政支援が実施される。欧州委は電池のバリューチェーン構築加速に向けて18億ユーロを投入し、このうち15億ユーロは電池セル生産者への無利子融資となる。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

WACOCA: People, Life, Style.